補給制動

補給制動の詳細

補給制動（ほきゅうせいどう）は、鉄道車両、とりわけ旧式の貨車において、制動力を効果的に維持するために考案された技術です。この方法は、自動空気ブレーキの特性を利用し、特に長坂での貨物列車の制御において重要な役割を果たします。

概要とその機構

貨物列車の運行に際して広く利用される自動空気ブレーキは、ブレーキ管内の圧力変化によって制動力が調整されます。具体的には、ブレーキ管の圧力を減少させることで制動力が増し、逆に圧力を加えることで制動力が減少します。この特性により、特に長大な下り勾配においては、速度を一定に保つために機関士がブレーキ弁を操作し、必要となる圧力を保つことが求められます。

しかし、貨車のブレーキホースの接続部にあるゴムパッキンから空気が漏洩することがあります。この空気の漏れによってブレーキ管内の圧力が減少し、結果として自動空気ブレーキの特性によって追加の制動力が生じます。この現象は制動力の過剰な増加を引き起こし、最終的には列車の速度が低下し、停車してしまう危険性があります。

さらに、旧式貨車のブレーキ装置に使用されるK制御弁は特定の方法で制動力を調整することができず、ブレーキが全て解除されてしまうと制動力がゼロになるため、場合によっては暴走事故を引き起こす恐れがあります。

補給制動の運用方法

補給制動は、機関士がブレーキ管圧力計を注視しつつ、ブレーキハンドルを微調整して空気圧を補充する技術です。その目的は、漏れによって失われた圧力を補うことです。この操縦は熟練した技術を要するため、特に長大な下り勾配がある区間で需要が高い手法となっていきました。補給制動は別名「長周期制動法」とも呼ばれ、その名称が示す通り、制動力の維持に長期間かかる操作を特色としています。

ただし、補給する空気圧の位置を誤ると、逆にブレーキが緩んでしまうリスクがあり、その結果、暴走事故が発生することもあるため、特定の場所では補給制動の使用が禁止されることがあります。例えば、十三本木峠ではその危険性から使用が制限されています。

補給制動の歴史

この補給制動という手法は、1935年（昭和10年）頃、広島機関区で勤務していた機関士の吉岡静一によって考案されました。彼は後に広島機関区長を務め、1953年には国鉄最高の名誉とされる顕功賞を受賞しました。吉岡氏の努力によって、補給制動は日本中の長大な下り勾配を持つ路線で広がり、鉄道の安全運行に寄与することとなりました。

このように、補給制動は鉄道において非常に重要な技術であり、今もなお多くの運行現場で発展と改良が続けられています。

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