裸の島

裸の島

『裸の島』は、1960年に公開された新藤兼人監督による日本映画。近代映画協会の解散記念作品として製作されました。瀬戸内海に浮かぶ宿禰島を舞台に、電気・ガス・水道のない環境で自給自足の生活を送る家族の姿を、ほとんど台詞を用いずに、映像と音楽のみで描き出しています。

あらすじ

瀬戸内海の小さな島で暮らす夫婦と二人の息子。島にはわずかな平地があるだけで、生活は厳しい。夫婦は毎日、隣島まで小舟を漕ぎ、飲料水と作物のための水を汲みに行きます。汲んだ水は桶に入れられ、天秤棒を担いで島の急斜面を運び上げられます。重労働に加え、作物を育てるには厳しい環境です。ある日、子供たちが鯛を釣り上げ、家族は喜びを分かち合います。しかし、束の間の幸せもつかの間、長男が病に倒れ、亡くなってしまいます。悲しみに暮れる家族ですが、それでも生きていかなければなりません。妻は悲しみのあまり、畑の作物を引き抜いてしまいますが、やがて落ち着きを取り戻し、再び水運びを始めます。過酷な環境の中、家族は生きるために懸命に働き続けます。

製作の背景

本作は、経営危機にあった近代映画協会の解散記念作品として、低予算で製作されました。新藤兼人監督は、瀬戸内海の宿禰島でロケーション撮影を行い、キャスト4人、スタッフ11人という少人数で映画を作り上げました。台詞を極力排し、映像と音楽で物語を語るという手法は、当時の映画界では斬新な試みでした。

作品の評価

『裸の島』は、公開当時から高い評価を受け、モスクワ国際映画祭グランプリをはじめ、数々の国際映画祭で受賞しました。その芸術性の高さは世界中で認められ、60カ国以上で上映されるという国際的な成功を収めました。また、興行的にも成功し、近代映画協会は解散を免れることができました。

カナダでは非常に人気が高く、最も上映回数の多い日本映画と言われています。

スタッフ

監督・脚本・美術: 新藤兼人
製作: 松浦榮策、新藤兼人
撮影: 黒田清巳
音楽: 林光

キャスト

トヨ（妻）: 乙羽信子
千太（夫）: 殿山泰司
太郎（長男）: 田中伸二
次郎（次男）: 堀本正紀

ロケ地

宿禰島 (広島県三原市)

受賞

1961年: モスクワ国際映画祭 グランプリ
1962年: メルボルン国際映画祭 グランプリ
1963年: マンハイム映画祭 グランプリ

『裸の島』は、セリフを極限まで排除した映像表現、林光による音楽、そして乙羽信子と殿山泰司の演技によって、人間の根源的な生きる力を描いた作品として、映画史に残る傑作と言えるでしょう。

もう一度検索