殿山泰司

殿山 対子の生涯と業績

殿山 泰司（とのやま たいじ、1915年10月17日 - 1989年4月30日）は、独自の風貌と個性的な演技で日本映画界に名を刻んだ俳優であり、著名なエッセイストとしても知られています。兵庫県神戸市に生まれ、長い人生を通じて多くのジャンルで活躍した彼の軌跡を辿ってみましょう。

生い立ちと若き日々

殿山は神戸の生糸商の長男として育ちました。6歳の時に父の事業が破綻し、家庭は不安定になりました。父と義母の関係に悩む中で、彼は少年時代を東京都中央区銀座で過ごしました。この時、銀座に現存する「お多幸本店」というおでん屋が家庭の一部となりますが、彼は義母に懐けない日々が続きました。退学した後、父の死去により家業を継ぐことになるものの、後に兄に店を譲ることになります。

俳優デビューと成長

1936年、彼は俳優の道を志し新築地劇団に入団します。そこでの活動を経て、1939年に南旺映画の『空想部落』で映画デビューを果たしました。1942年には京都の興亜映画に所属しその後召集されるも、戦後しっかりと俳優としての道を歩み続けることになります。氏名も殿山泰司に改め、松竹大船撮影所にて復帰しました。

名脇役としての功績

殿山は「三文役者」と自称し、名脇役として多くの映画に出演しました。特に黒澤明や今村昌平といった巨匠たちに重用され、約300本の映画に出演。実に多方面にわたる役柄をこなすことで、個性派俳優として名を馳せました。特に『裸の島』や『人間』などでは、主役とも言える存在感を誇りました。

エッセイストとしての活動

1966年に『三文役者の無責任放言録』を刊行したのを皮切りに、彼は幅広いテーマに渡って執筆を重ねました。エッセイでは独特の文体を持ち、特にジャズやミステリーに対する愛情を綴った作品が評価されました。彼の文章は「殿山調」とも称され、多くの支持を受けました。

私生活と晩年

殿山は私生活においても波乱に富んでおり、特に女性関係でのエピソードが多く、一生を通じて700人以上の女性と交友を持ったと言われています。彼は宵の遊びを好み、酒を交えた賑やかな社交を楽しむ一方で、病気に見舞われることも多く、1989年に肝臓がんでこの世を去りました。彼の遺体は鎌倉市の浄光明寺に埋葬されています。

影響と継承

彼の魅力は庶民的な役柄を見事に演じ切る能力にありました。最後まで役者としての強く印象的な存在だった殿山は、映画界及び演劇界に多大なる影響を及ぼしました。彼の人生は映画化され、その中で彼が果たした役割や業績は今も多くの人に語り継がれています。新藤兼人による伝記や映画『三文役者』により、彼の遺した足跡が今後も語り継がれることでしょう。

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