複合遺産 (世界遺産)

複合遺産：自然と文化が織りなす、かけがえのない世界

ユネスコの世界遺産は、その価値に応じて「文化遺産」、「自然遺産」、「複合遺産」に分類されています。このうち「複合遺産」は、自然と文化が一体となった、顕著な普遍的価値を持つ地域を指します。文化遺産と自然遺産それぞれの登録基準を少なくとも1項目ずつ満たす必要があり、自然環境と人間の文化的営為が共に、世界的に重要な価値を持つと認められた場合に登録されます。

複合遺産の登録基準

複合遺産の登録基準は、文化遺産と自然遺産の基準の両方にまたがります。そのため、登録されるためには、文化的な側面と自然的な側面の両方の価値が、国際的に認められるレベルで高いことが求められます。基準項目の数は物件によって異なり、1項目ずつを満たす場合もあれば、複数の項目を満たす場合もあります。すべての基準項目を満たす物件は、現時点では存在しません。

例えば、マリのバンディアガラの断崖やオーストラリアのウィランドラ湖群地域は、文化遺産と自然遺産の基準をそれぞれ1項目ずつ満たしています。一方、オーストラリアのタスマニア原生地域や中国の泰山は、より多くの基準項目を満たしており、その普遍的価値の高さがうかがえます。

複合遺産と文化的景観

1992年以降、「世界遺産条約履行のための作業指針」において「文化的景観」という概念が導入されました。これは、自然と文化が長期にわたって相互作用してきた結果生まれた景観を指し、複合遺産と重複する部分があります。しかし、両者は完全に一致するものではなく、それぞれに異なる基準や登録プロセスが存在します。複合遺産は、自然と文化の両面において顕著な普遍的価値を持つことが求められる一方、文化的景観は、人為的な改変や管理が加えられた景観であっても登録される可能性があります。

複合遺産の現状

世界遺産全体の約1100件のうち、複合遺産は30件程度と、非常に少ない数です。これは、自然と文化の両面において高い価値を持つ地域が、世界的に見ても限られていることを示しています。それぞれの複合遺産は、固有の自然環境とそこに育まれた文化、そして人々の生活様式が一体となって、かけがえのない価値を創造していると言えるでしょう。

複合遺産リストに記載されている登録年は、複合遺産としての登録年を示しています。文化遺産または自然遺産として先に登録され、後に複合遺産に追加登録された場合は、最初の登録年を括弧書きで併記することがあります。

複合遺産を通して考える、未来への継承

複合遺産は、自然と文化の調和のとれた発展のあり方、そして持続可能な社会の構築を考える上で重要な役割を担っています。これらの地域を保護し、未来へ継承していくことは、人類共通の課題であり、国際的な協調体制が必要不可欠です。複合遺産への理解を深めることで、自然と文化の保全、そして持続可能な社会の実現に向けて、より多くの関心が集まることを期待しています。

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