複数学位

複数学位（ダブル・ディグリー）

制度の概要

複数学位、またはダブル・ディグリー（double degree）とは、学生が単一の学修課程に取り組むことで、同時に二つの異なる高等教育機関からそれぞれ正式な学位を授与される仕組みを指します。これは、二重学位や共同学位と呼ばれることもあります。英語圏ではdouble degreeの他に、dual degree、combined degree、conjoint degree、joint degree、さらにはdouble graduationといった様々な名称で呼ばれることがあります。

国際的な連携と文部科学省の定義

複数学位プログラムは、特に国際的な大学間連携によって実現されることが多い形態です。日本の文部科学省は、このようなプログラムを「我が国と外国の大学が、教育課程の実施や単位互換等について協議し、双方の大学がそれぞれ学位を授与するプログラム」と定義しています。この定義が示すように、単に海外の大学に留学して単位を取得するだけでなく、教育課程の内容や修了要件、単位の互換性などについて、関係する複数の大学が綿密に協議し、共同でプログラムを構築・運営することがこの制度の核心です。

学生は、このプログラムを通じて両大学のカリキュラムを履修し、それぞれの修了要件を満たすことで、卒業時に二つの大学から個別の学位記を受け取ることができます。これにより、学生は専門分野の知識を深めるだけでなく、異なる国の教育システムや文化に触れ、より幅広い視野と高度な国際感覚を養うことが期待されます。大学側にとっても、教育の国際競争力強化や、多様な学生の受け入れ、教育研究活動の活性化につながるメリットがあります。

日本における導入状況

近年、日本の大学でも複数学位プログラムの導入が積極的に進められています。これは主に海外の大学との協力によって行われており、学生は両方の大学に在籍し、それぞれの定める期間や要件を満たすことで学位取得を目指します。導入している大学は、国立、公立、私立を問わず多岐にわたります。

以下に、複数学位プログラムを提供している、あるいは提供していたことのある日本の大学の例を挙げます。

国立大学

東京大学公共政策大学院
京都大学
一橋大学
東京工業大学
北海道大学
大阪大学
東北大学
鳥取大学
長岡技術科学大学

公立大学

国際教養大学

私立大学

慶應義塾大学
早稲田大学
上智大学
明治大学
東京経済大学
関西大学
同志社大学
立命館大学
* 立命館アジア太平洋大学

これらの大学では、特定の学部や研究科において、海外の協定大学との間で特定のプログラムが提供されています。プログラムの内容や応募資格、必要な留学期間などは大学や学科によって異なるため、詳細は各大学の情報を確認する必要があります。

特殊な事例：ロシア極東連邦総合大学函館校

日本の正規の大学ではありませんが、国内に設置された高等教育機関として、複数学位と同様の効果を持つユニークな事例として、ロシア極東連邦総合大学函館校があります。この機関の四年制ロシア地域学科を修了した学生は、日本の専修学校制度に基づく「高度専門士（文化・教養課程）」の称号に加え、連携するロシアの極東連邦大学から「学士号（外国地域研究）」が授与されます。これは、日本の専修学校と海外の大学という異なる種類の教育機関が連携し、複数の資格・学位を取得できる実例として注目されます。

結び

複数学位制度は、グローバル化時代において、学生が国際的な専門性と視野を同時に獲得するための効果的な教育手法です。国内外の教育機関が協力し、教育の質を高め、学生の国際的な活躍を支援するための重要な取り組みとして、今後もさらなる発展が期待されます。文部科学省が国際的な教育連携促進のためにガイドラインを整備するなど、国としてもその推進が推進されています。

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