複本

複本（ふくほん）とは

複本とは、元の書籍や文書が複数存在することを指し、特に図書館が同じ図書を二部以上所蔵する際に使われる用語です。本記事では、特に図書館における複本の意義や問題点についてまとめます。

複本の役割

図書館における複本は、様々な理由から必要とされます。人気のある本、例えばベストセラーや児童向けの絵本は、多くの利用者に対応するために、通常よりも多く所蔵される傾向があります。特に、地域で行われる読書会や大勢の参加者が予想されるイベント向けのテキストの場合、一人あたりが手に入れることができるよう、複数のコピーが準備されることが一般的です。

また、百科事典などの参考資料は、館内での閲覧用途と貸出用にそれぞれ異なる複本を用意することが求められます。これにより、利用者が書籍を必要な場面で自由に使えるような環境が整えられています。

複本問題

しかし、近年では「複本問題」と呼ばれる懸念も浮上しています。いくつかの公共図書館が人気のある書籍を多数購入し、無料で貸し出すことが書店の収益に悪影響を及ぼすのではないかという見方があるのです。2000年には、一部の著作家が「図書館が貸し出すことが本の販売を妨げている」と主張し、国の審議会での議論の対象となる事態に発展しました。

2003年には、日本図書館協会と日本書籍出版協会が共同で行った調査が発表され、一般的な公共図書館の複本の冊数は予想よりも少ないことが判明しました。この結果、図書館への批判は徐々に収束していきましたが、2015年には再び出版関係者による図書館への攻撃が起こるなど、依然として議論の余地が残っています。

この問題に対し、図書館情報学者の常世田良は、出版業界が売上減少の理由を図書館の複本に求め、その本質的な問題に向き合おうとしない姿勢を厳しく批判しています。複本の存在そのものが、書籍市場における課題を解決するわけではなく、その背後にある大きな経済的要因に目を向けるべきだと主張しています。

まとめ

複本は図書館において不可欠な存在であり、利用者にとっての利便性を向上させる役割を果たしています。しかし、その存在が出版業界に与える影響や複本問題についての議論が続いているのも事実です。今後も図書館と出版業界の関係については、より深い理解と解決策が求められることでしょう。

参考文献

• - 常世田良「いわゆる『複本問題』について」『図書館界』2016年5月号（68巻1号）
• - 『最新図書館用語大辞典』図書館用語辞典編集委員会 編、柏書房 発行、2004年

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