褐色館

褐色館の歴史と資料センターの設置

褐色館（かっしょくかん、ドイツ語: Braunes Haus）は、ミュンヘンにあった国民社会主義ドイツ労働者党（ナチ党）の党本部です。この建物は、バイエルン州ミュンヘンのブリエナー大通り45番地に位置していました。褐色館の歴史は、1828年に遡ります。フランスの建築家ジャン・バティスト・メチヴィエによって新古典主義様式の住宅として建設され、その後1876年にイギリスの実業家ウィリー・バーロウが取得し、「バーロウ宮殿」として知られるようになりました。

ナチ党の本部への転換

1930年、ナチ党はこの建物を80万5,864金マルクで購入し、以降「褐色館」と名付けました。党の急速な成長に伴い、当時の本部を広い空間に移行する必要が生じたためです。この購入資金は実業家フリッツ・ティッセンによって提供されました。建物はミュンヘン出身の建築家パウル・ルートヴィヒ・トローストによって大規模に改装され、多くの改変がヒトラー自身のアイデアを基に行われました。1931年までに、ナチ党の全ての機能がここに移転されました。

褐色館内部には、ヒトラーの執務室があり、英米の実業家ヘンリー・フォードの肖像画も飾られていました。さらに、ナチ党の象徴とされていた「血染めの党旗」、つまりミュンヘン一揆で命を落とした党員の血が付着した旗も保管されていました。

第二次世界大戦とその後

しかし、1943年10月の連合軍による空襲によって褐色館は多大な被害を受け、続く空襲により完全に崩壊しました。血染めの党旗も1944年の入隊式で最後に展示された後、行方不明となり、焼失したと考えられています。興味深いことに、この瓦礫からは連合軍によってヒトラーの反ユダヤ主義に関する最古の記録とされる「ゲムリッヒ書簡」が発見されたという歴史的な出来事もあります。戦後の1947年には、瓦礫の撤去が行われたものの、その跡地には何も建設されず、放置されました。

資料センターの設立

2005年12月6日には、バイエルン州政府が褐色館跡地に国家社会主義に関する資料センターを設置することを決定しました。起工式は2008年に予定されていましたが、資金調達の問題から計画は進展を見ませんでした。その後、2009年には市当局と州政府が協力して資金を調達し、2011年に工事が開始されました。そして、2015年4月30日には資料センターが開館し、翌日から一般に公開されることとなりました。

この資料センターは、ナチス・ドイツの歴史や国家社会主義についての重要な情報源となり、未来の世代にその教訓を伝える役割を果たしています。褐色館の歴史もこのようにして記憶され続けています。

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