褐虫藻

褐虫藻（Zooxanthellae）とは

褐虫藻（かっちゅうそう）は、英語で "zooxanthellae" と呼ばれる、海産無脊椎動物と細胞内共生する渦鞭毛藻類の単細胞藻類の総称です。具体的には、Symbiodinium spp.、Amphidinium spp.、Gymnodinium spp.などが知られています。これらの藻類は、熱帯や亜熱帯の海に生息する様々な無脊椎動物の細胞内に共生しています。

特徴

褐虫藻は、直径約10マイクロメートルと非常に小さな生物です。色は黄褐色または褐色をしています。共生状態では球形をしていますが、宿主から単離されると卵形に変化し、鞭毛を使って泳ぐことが確認されています。彼らは光合成を行い、その過程で生成された余剰の生産物を宿主に渡すと考えられています。

共生する動物

褐虫藻と共生する動物は多岐にわたります。

造礁サンゴ: 全ての造礁サンゴは褐虫藻と共生しており、サンゴ礁生態系を支える上で非常に重要な関係です。
クラゲ類: サカサクラゲやタコクラゲなどの根口クラゲ類が褐虫藻と共生しています。
イソギンチャク類: 一部のイソギンチャクも褐虫藻を共生させています。
シャコガイ類: シャコガイは外套膜に褐虫藻を持ち、普段は殻を広げて外套膜を外に向けて広げています。
リュウキュウアオイガイ: この二枚貝は殻を半ば砂に埋め、殻の平らになった面を明るい方に向けています。
ウミウシ: ごく一部のウミウシも褐虫藻を持つことが知られています。
無腸動物: 明るい場所に集まり光合成を行うことで知られています。
原生動物: 有孔虫の仲間である浮遊性のGlobigerinaや底在性のホシズナやゼニイシなども褐虫藻を持つことがあります。

造礁サンゴと褐虫藻の関係

造礁サンゴは、褐虫藻からの光合成産物と、自らの触手で捕食する動物プランクトンから栄養を摂取しています。褐虫藻の光合成がサンゴの栄養供給にどれだけ貢献しているかについては、研究報告によって見解が異なります。しかし、サンゴが生態系の中で生産者であるか消費者であるかという議論は、最近では生産者であるという見方が強まっています。

褐虫藻はサンゴの体内で増殖しますが、その密度はほぼ一定に保たれています。これは、サンゴが褐虫藻を体外に放出することで調整していると考えられています。放出された褐虫藻は、サンゴ礁の他の動物の餌となったり、他の無脊椎動物に取り込まれたりします。

また、サンゴの骨格形成には、褐虫藻の光合成が促進する役割を果たしていると言われていますが、具体的なメカニズムについてはまだ解明されていません。他の褐虫藻と共生する動物においても、石灰質の殻や骨格の形成が促進されるという報告があります。

褐虫藻の側では、サンゴの代謝産物である二酸化炭素やアンモニアを光合成の基質として利用しています。この共生関係は、互いに利益をもたらす相利共生の一例と言えます。

その他

近年、サンゴの白化現象が大きな問題となっています。これは、褐虫藻が宿主から排出されたり、褐虫藻の持つクロロフィル量が減少したりすることで、サンゴの体色が失われ、骨格が透けて見えるようになる現象です。主な原因は、長期間続く高水温（約30度）であると考えられています。また、共肉部が衰退し、骨格が剥き出しになった状態は「骨格化」と呼ばれ、「白化」とは区別されますが、混同されやすいです。

褐虫藻と宿主との関係は、海洋生態系において非常に重要な役割を果たしており、その保護と研究が求められています。

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