西ドイツ国鉄VT11.5型気動車

西ドイツ国鉄VT11.5型気動車

西ドイツ国鉄のVT11.5型気動車は、1957年に製造された特急旅客型の気動車です。この車両は、ドイツ連邦鉄道（DB）の特急列車、Trans Europ Express（TEE）用に設計され、その運行開始にあたる西ヨーロッパ各国で広く用いられました。1968年には新しい形式番号601に改称され、一部の車両はガスタービン動車602型に改造されて1990年まで使用されました。

車両構造

VT11.5型の設計には、第二次世界大戦前からの特急用気動車製造の経験が生かされています。特に1938年に試作されたクルッケンベルク高速気動車や、1953年のVT10.5型から影響を受けています。通常、ヴェッティングエンドに2両の動力車、中間に食堂車や座席車、コンパートメント車を組み合わせた7両固定編成が使用されましたが、編成は柔軟に変更可能でした。

この気動車は、一定した快適さを提供するため、全車両が1等車で構成され、定員122名、編成全体の重量は約230トン、長さは130メートルに及びます。車体は赤地にベージュ色のツートンカラーで塗装され、空調装置も完備されています。

動力システム

動力車は、当初ダイムラー・ベンツ、MAN、マイバッハ製のV型12気筒ディーゼルエンジンを搭載し、出力は809 kW（1100 PS）でした。後に異なるエンジンへの換装も行われています。最高速度は最初140 km/hでしたが、性能向上により160 km/hに引き上げられました。ブレーキは空気ブレーキと電磁吸着ブレーキによる二重構造で、安全性が確保されています。

運用史

VT11.5型の運行は1957年6月2日のTEE運行開始から始まりましたが、当初は1編成しか存在せず定期運用にはつけられませんでした。初めて正式に用いられたのは、1957年7月15日のTEE「サフィール」でした。その後もさまざまなTEEサービスに投入され、特にフランクフルトやアムステルダムなど多くの国際路線で活躍しました。

1968年には、車両番号が601に変更され、その後は西ドイツ国内の特急、「インターシティ」として使用されることが増えていきました。中でも602型に改造された車両は、ガスタービンエンジンによるより高速度運転が可能で、これによって運行体系に新たな可能性をもたらしました。

保存状況

1990年にベルリンの壁が崩壊した後、残った車両の一部が特別列車用として使用されました。そして、最後に使用されていたVT11.5型は、1988年にはすべて廃車となり、解体される運命を迎えました。しかし、保存車両もあり、ニュルンベルク交通博物館やアウクスブルク鉄道公園では、VT11.5型の一部が観光用に保存されています。

このように西ドイツ国鉄VT11.5型気動車は、技術面での革新や、運行面での応用が評価され、旅行者に高い快適性を提供した歴史的な輸送手段となっています。

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