TEE

Trans Europ Express (TEE) - ヨーロッパを駆け抜けた国際列車

Trans Europ Express、略称TEEは、1957年から西ヨーロッパで運行されていた国際列車の種別です。日本語では「欧州特急」、「ヨーロッパ横断特急」、「ヨーロッパ国際特急」などと訳されます。

TEEの特徴

TEEは、国際的に活動するビジネス客を主な対象として設定され、第二次世界大戦後に急速に発達した航空機や自動車に対抗できる速度、利便性、快適性を追求しました。

国際的な移動を円滑化: 出入国管理や税関検査などの手続きは、原則として走行中の車内で行われ、国境駅での長時間停車は不要でした。
充実したサービス: 食堂車が連結されるか、車内の厨房からケータリングサービスが行われました。列車によっては、車内からの電話や秘書によるタイプセットなどのサービスも提供されました。
ビジネス客向けのダイヤ: ほとんどの系統で1日に1往復から2往復程度運行され、早朝に始発駅を出て昼頃に終着駅に着き、逆向きの列車は夕方に発車して深夜に到着するというダイヤが組まれました。これはビジネス客が午後を目的地での仕事に使えるようにするためでした。
料金: 各国鉄の一等運賃を合算したものに加え、TEE用の特急料金が必要でした。小人料金の設定はなく、各種の割引制度もほとんど適用されませんでしたが、ユーレイルパスは利用可能でした。
全車指定席: 一部の国内区間相互発着利用の場合を除いて、基本的に全車指定席であり、利用には予約が必要でした。

TEEの歴史

TEE以前の国際列車

ヨーロッパにおける国際列車の運行が本格化するのは1872年の国際寝台車会社（ワゴン・リ）設立からです。1880年代から1890年代にはオリエント急行、北急行など多くの国際列車が生まれました。これらの列車は主にワゴン・リ社の一等寝台車と食堂車で編成されていました。

第一次世界大戦後の1920年代には、寝台列車のほか、サロン車（プルマン車）による昼行の国際列車も登場しました。ワゴン・リ社によるエトワール・デュ・ノールやエーデルヴァイス、ミトローパ車によるラインゴルトなどが代表例です。

TEEの構想

TEEの構想を提案したのはオランダ国鉄の総裁であったF.Q.デン・ホランダーです。彼は1953年10月30日の記者会見で、Europa Express（ヨーロッパ急行）という新たな国際列車を提唱しました。これはすべて一等車からなる高速の気動車列車で、当時の旅客機と同等以上の内装を有し、国境で乗務員を交代することなく運行されるべきものとされました。

デン・ホランダーの提案は国際鉄道連合で検討され、以下の基準を満たした車両を各国鉄が製作し、共同運行することとなりました。

最高速度は140 km/h（平坦線）
軸重は18 t以下
共通のブレーキシステムを備える
乗り心地は最高の水準のものとし、客席の騒音も可能な限り抑える
客席は一等車のみとし、座席は最大で横3列
編成定員は100名から120名
車内で温かい食事をとれること
塗装はクリーム色ないしベージュ地に赤帯とし、前頭部に "TEE" のエンブレムを付ける

1957年6月2日にTEEの運行が開始され、当初はオランダ、ベルギー、ルクセンブルク、フランス、西ドイツ、スイス、イタリアの7ヶ国で運行されました。

動力の変遷

TEEは当初すべての列車が気動車列車でしたが、1961年にスイス国鉄が4方式すべてに対応したRAe TEE II形電車を投入し、電車TEEが登場しました。1960年代には西ヨーロッパの主要幹線の電化が進み、各国鉄もTEEに電気動力を用いるようになり、電気機関車牽引の客車列車が登場しました。

国内列車としてのTEE

TEEは本来すべて国際列車ですが、1965年5月30日からは西ドイツとフランスでそれぞれの国内のみを走る最優等[[列車]]もTEEとされるようになりました。その後イタリアでも国内の優等[[列車]]の一部がTEEとされるようになりました。

高速化

TEEの最高速度は1957年当時はすべて140 km/hでしたが、電車や電気機関車を用いることにより1960年代には160 km/h程度まで向上しました。1970年代にはフランスや西ドイツの多くの路線でTEEの最高速度が200 km/hに引き上げられました。

終焉

1970年代になると国際列車の利用者も大衆化し、二等車の需要が増えるのと引き替えに、一等車のみのTEEは利用が衰え始めました。1987年5月31日、ヨーロッパの国際列車の新たな種別としてユーロシティが誕生し、元TEEであった国際インターシティの多くがユーロシティとなりました。

1988年9月25日のダイヤ改正をもって「一等車のみからなる国際列車」としてのTEEは消滅し、1991年5月31日にはフランスの国内TEEも廃止され、TEEは一旦全て廃止されました。

ノンストップ列車としての復活

1993年5月23日から、フランス国鉄とベルギー国鉄はパリ - ブリュッセル間を途中駅無停車で結ぶ列車4往復をTEEとし、列車種別としてのTEEが2年ぶりに復活しました。ただしこれらのTEEはかつてと異なり、一等車と二等車の双方を連結していました。このTEEも1995年5月26日に廃止され、TEEの歴史に幕を閉じました。

TEEの功績

TEEが本来の目的を果たした期間は決して長くはありませんでしたが、ビジネスユーザをターゲットとしたその上質なサービスは、鉄道におけるサービスレベルの向上に貢献しました。これらの要素は、後のインターシティや、現在の高速鉄道にも引き継がれています。

TEE2.0

2020年9月21日、ドイツが「新世代のTEE」 - Trans Europe Express TEE2.0 ネットワークを提案しました。これは航空連合に対抗する意味もあり、中欧3カ国を結ぶ列車に対し、統合されたサービスを提供する事を目標としています。

TEEに使用された主な車両

TEEでは、気動車、電車、客車など様々な車両が使用されました。

VT11.5型（西ドイツ国鉄）：TEEの代表的な気動車
RAe TEEII形（スイス国鉄）：4つの電源方式に対応した電車
DEVステンレス客車（フランス国鉄）：ステンレス製の軽量客車
* TEE/IC客車（西ドイツ国鉄）：インターシティと共通運用された客車

まとめ

TEEは、ヨーロッパの国際列車史において重要な役割を果たした列車です。その快適性、高速性、利便性は、現代の鉄道にも受け継がれています。

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