西中川駿

西中川 駿（にしなかがわ はやお）

西中川駿氏は、日本の解剖学者および動物考古学者として知られる研究者です。生年は明確ではありませんが、長年にわたり教育機関での研究と教育活動に献身されました。

経歴と学歴

西中川氏の学術的なキャリアは、東京大学での学びから始まりました。1969年3月には、同大学より農学博士の学位を取得しています。この際の博士論文は、「哺乳動物乳腺の血管系に関する解剖学的研究」と題されており、初期の研究が解剖学分野に深く根ざしていたことを示しています。

その後、西中川氏は鹿児島大学に奉職し、長きにわたり同大学の発展に貢献しました。特に、2000年4月1日には鹿児島大学農学部長に就任し、学部運営の要を担いました。大学での顕著な功績が認められ、2003年には鹿児島大学名誉教授の称号を授与されています。名誉教授となった後も、鹿児島大学総合研究博物館の学外協力者として、引き続き大学の研究活動に関与されました。

また、西中川氏は大学での職務と並行して、放送大学の活動にも携わりました。放送大学鹿児島学習センターでは、第二代所長を務め、地域における生涯学習の振興にも貢献しています。

研究活動と業績

西中川氏の研究活動は、解剖学を基盤としつつ、次第に動物考古学へと専門を広げていきました。特に、日本の古代遺跡から出土する動物遺体の分析を通じて、当時の人々がどのように動物を利用していたのか、あるいは家畜としての動物がどのように日本に渡来したのか、といったテーマに深く切り込んでいます。

その研究成果は、いくつかの重要な著作や論文として発表されています。

代表的な著作の一つに、2012年に同成社から刊行された共著『骨考古学と蝦夷・隼人』（市民の考古学12）があります。この書籍は、古人骨や動物遺体の分析から、古代東北の「蝦夷」や南九州の「隼人」といった集団の実態に迫ろうとするものです。西中川氏は、この中で「古代南九州における動物遺体と動物利用 ウマとウシを中心に」という章を担当し、南九州における弥生時代から古墳・古代にかけてのウマやウシといった主要な家畜の利用状況や、彼らの生活との関わりについて、詳細な分析結果を発表しています。

さらに、科学研究費補助金による研究成果報告書として、『古代遺跡出土骨からみたわが国の牛、馬の渡来時期とその経路に関する研究』（1991年）をまとめるなど、古代日本のウマやウシの伝播に関する研究も積極的に行いました。

2011年には、西中川氏の古希を記念して、『遺跡から出土する動物たち : 西中川駿先生古希記念論集』が刊行されており、これは氏の研究活動に対する学界からの敬意を示すものと言えるでしょう。この記念論集には、動物考古学を中心とした多岐にわたる研究が収められています。

国立情報学研究所のデータベースには、西中川氏が発表した多数の論文が収録されており、その幅広い研究活動の一端を知ることができます。

西中川駿氏は、解剖学の手法を動物考古学に応用することで、古代日本の人々と動物との関わり、特に家畜の導入と利用という側面から、歴史や文化の解明に貢献した研究者です。鹿児島大学における教育・研究活動、そして放送大学での地域貢献など、その功績は多岐にわたります。

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