西久保 (東京都港区)

西久保（にしのくぼ、にしくぼ）

西久保は、かつて東京都港区に存在した地名で、現在の虎ノ門二丁目から五丁目にかけての地域にあたります。愛宕山の西側に位置し、窪地を形成していました。この地名の歴史は古く、江戸時代以前から存在していたと考えられていますが、詳しいことは分かっていません。

江戸時代

江戸時代初期、西久保の大部分は武家地として利用されていました。しかし、現在の桜田通り沿いには町屋も存在し、武家地と町屋が混在する地域でした。

1657年の明暦の大火後、西久保城山町は北条氏利の屋敷となり、その後、住民は多摩郡牟礼村（現在の三鷹市牟礼）へ移住し、新田開発を命じられました。この移住先は後に西久保村となり、現在の武蔵野市西久保につながります。

江戸時代には、以下のような町が西久保に存在しました。

西久保新下谷町: 1698年に下谷町一丁目西側の代地として成立しました。
西久保車坂町: 下谷車坂町の代地として成立し、何度か名称が変更されました。
西久保同朋町: 1699年に同朋衆4名の拝領町屋敷として成立しました。
西久保普門院門前: 1737年に成立し、1868年に西久保八幡門前と改称されました。
西久保大養寺門前: 1611年に開創された大養寺の門前町として成立。江戸町奉行の支配下にありました。1821年の記録によると、52軒の家があり、うち11軒が家主、4軒が地借、31軒が店借、6軒が空家でした。

西久保を冠さないものの、西久保地域にあった町として、以下のものがあります。

神谷町: 1696年まで西久保田町と呼ばれていました。
葺手町: 1691年に移転し、西久保が冠されることもありましたが、正式には改称されていません。
天徳寺門前町: しばしば西久保が冠されていました。
芝富山町: 1721年に増上寺西側から一部が移転しました。西久保同朋町の向かいに位置し、西久保広小路と呼ばれていました。

明治時代

明治時代に入ると、武家地が解体され、新しい町が次々と誕生しました。既存の町も再編され、以下のような町が成立しました。

西久保明船町: 1867年に旧武家地に明石町、船松町二丁目が移転し、後に周辺の町を合併して成立しました。
西久保八幡町: 1869年に西久保八幡門前と西久保大養寺門前が合併して成立しました。
西久保巴町: 1869年に西久保新下谷町、西久保車坂町などが合併して成立し、1872年には越智松平家上屋敷や天徳寺を合併しました。
西久保広町: 1869年に芝富山町、芝青松寺門前などが合併して成立し、1872年には青竜寺や光円寺などの寺地を合併しました。
西久保桜川町: 1872年に旧武家地に成立しました。
西久保城山町: 1872年に旧武家地に再成立しました。
葺手町: 1872年に武家地を合併しました。

これらの町は、戦後までその町域を大きく変更することなく存続しました。

戦後

戦後、芝区が赤坂区、麻布区と合併して港区となると、西久保地域も旧区名である「芝」を冠して「芝西久保」と呼ばれるようになりました。しかし、1977年に住居表示が実施されたことで、西久保を冠する全ての町は虎ノ門に含まれることとなり、住所から「西久保」という地名は消滅しました。現在では、日常生活において最寄りの神谷町駅周辺地域が「神谷町」と呼ばれることが多く、西久保という地名は急速に忘れ去られています。しかし、地域内の八幡神社は「西久保八幡」とも呼ばれ、菊地寛実記念智美術館が入居する建物は「西久保ビル」と称するなど、わずかにその名残をとどめています。

西久保は、江戸時代から明治、そして現代へと変遷を遂げた歴史ある地名です。その変遷を知ることで、港区の歴史をより深く理解することができます。

関連情報

神谷町駅
神谷町
八幡神社 (東京都港区虎ノ門)
西久保八幡貝塚
* 武蔵野市西久保

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