越智松平家

越智松平家：激動の幕末を生き抜いた大名家

越智松平家は、徳川幕府6代将軍・徳川家宣の弟、松平清武を祖とする名門で、代々「武」の字を名前に用いました。親藩大名として、江戸時代を通じて館林藩、棚倉藩、浜田藩を治め、明治維新後には華族子爵家としてその歴史を刻みました。

江戸時代の興隆と転変

清武は、甲府藩主・徳川綱重の次男として生まれましたが、幼少期は甲府藩士越智家の養子として育てられました。実兄の家宣が将軍になると旗本に登用され、その後、上野国館林藩2万4000石の大名に叙任。家宣の遺言により加増が続き、5万4000石の領地を有する大名となりました。

その後、陸奥国棚倉藩への転封を経て、再び館林藩に戻り、さらに加増を受けて6万1000石となりました。しかし、天保7年（1836年）には石見国浜田藩へ移封され、その地で幕末を迎えることとなります。

幕末の動乱と藩存続の危機

最後の藩主・松平武聡の代、浜田藩は慶応2年（1866年）の第2次長州征伐に参加しますが、長州藩軍に敗北を喫します。浜田城を自焼し、出雲へ逃れた武聡は、その後、美作国鶴田の飛地領を拠点に、新たに鶴田藩を立藩しました。しかし、間もなく徳川幕府は滅亡。新政府軍との戦いに敗れ、改易も危ぶまれる状況に陥ります。

この危機を救ったのは、家老・尾関当遵の決死の行動でした。尾関は責任を負い、新政府に切腹謝罪を行うことで、藩の存続を許されました。この行為は、越智松平家の歴史における重要な転換点となりました。

明治維新後と華族への列せられる

明治2年（1869年）、版籍奉還により武聡は鶴田藩知事に任じられ、廃藩置県までその職を務めました。同年、華族制度が成立すると、越智松平家も大名家として華族に列せられました。明治17年（1884年）には、華族令の施行に伴い、武聡の子・武修が子爵に叙せられました。

東京市中野区に邸宅を構えた越智松平家は、華族として近代日本社会を歩み、その歴史に幕を閉じました。

系譜と参考文献

（系譜図は、本文からは省略。必要であれば別途作成可能です。）

参考文献

浅見雅男『華族誕生 名誉と体面の明治』リブロポート、1994年
新田完三『内閣文庫蔵諸侯年表』東京堂出版、1984年
小田部雄次『華族 近代日本貴族の虚像と実像』中央公論新社、2006年
華族大鑑刊行会『華族大鑑』日本図書センター、1990年

この資料から、越智松平家は単なる大名家としてだけではなく、江戸時代から明治時代への激動期を生き抜き、その存続をかけて様々な決断を迫られた家系であったことがわかります。その歴史は、日本の近代化という大きな流れの中で、小さな藩の生き様を物語っています。

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