西光寺 (品川区)

西光寺は、東京都品川区に所在する浄土真宗本願寺派の寺院です。その歴史は古く、1286年（弘安9年）に天台宗の僧侶であった栄順によって開山されました。ただし、口伝によれば、その起源はさらに古い958年（天徳2年）にまで遡るとも言われています。

寺の宗派は、1638年（寛永15年）に浄土真宗に転宗したとされていますが、寺に伝わる過去帳を詳細に調べると、歴代住職が栄順以来世襲で受け継がれていることから、実際には開山直後に浄土真宗に転宗した後、一時的に天台宗に復帰し、その後寛永期に再度浄土真宗に転宗した可能性が高いと考えられています。

江戸時代には、西光寺は桜の名所として広く知られていました。境内には、「醍醐桜」「姥桜」「児桜」と呼ばれる名木が数多く植えられ、多くの人々がその美しさを求めて訪れていました。しかし、1893年（明治26年）に発生した火災によって、これらの名木を含む境内は壊滅的な被害を受けました。その中で奇跡的に生き残ったのが「児桜」です。その後の品川区の調査により、この「児桜」は西光寺にしか存在しない固有の品種であることが判明しました。

文化財

西光寺は、歴史的にも貴重な文化財を所蔵しています。特に重要なのは以下の二つです。

重要文化財

金小札色々威胴丸

1976年（昭和51年）6月5日に国の重要文化財に指定されたこの鎧は、室町時代末期の作とされています。鎧を構成する小札の表面に金箔が施され、鮫皮が胸板や脇板に貼られており、紅・萌黄・白・紫の4色の威毛で仕立てられています。これは当時の畿内における最先端の華やかな意匠です。また、当世具足への移行期の特徴も見られ、草摺の間数が通常の8間から11間に増加し、背面の防御を強化する後立挙の板の段数も、通常の3段から4段に増やされています。この鎧は、1574年（天正2年）3月に織田信長から上杉謙信へ『洛中洛外図』と共に贈られたと伝えられていますが、甲冑研究家の竹村雅夫氏は、より古い1568年（永禄11年）2月贈呈の可能性が高いと推定しています。この鎧は、江戸時代前期に上杉家から会津藩主保科正之へと贈られ、その後、明治時代には益田孝の所蔵となりました。1965年（昭和40年）に、当時の西光寺住職で甲冑の収集家でもあった芳賀実成氏が取得しました。

竹村氏の研究によると、この鎧は他の謙信所用の甲冑とは意匠が異なり、着用された形跡がないことから、謙信の好みには合わず、使われることなく保管され、後代に贈答品として用いられたと推測されています。なお、この鎧の胴に備わっていた大袖は上杉家に残っており、現在は上杉神社が所蔵しています（山形県指定有形文化財）。

品川区指定文化財

西光寺石造供養塔 3基

1978年（昭和53年）11月22日に品川区の有形民俗文化財に指定された3基の石造供養塔は、いずれも江戸時代中期（17世紀中期）に作られたものです。

交通アクセス

西光寺は、JR京浜東北線、東急大井町線、りんかい線の大井町駅から徒歩約8分の場所に位置しています。

参考資料

平野栄次 著『品川区史跡散歩 (東京史跡ガイド9)』学生社、1993年
「大井村 西光寺」『新編武蔵風土記稿』 巻ノ53荏原郡ノ15、内務省地理局、1884年6月。

外部リンク

* 西光寺 大井の地で幾年～緑の中に佇むお寺です

もう一度検索