西堀栄三郎

西堀栄三郎の生涯と業績

西堀栄三郎（にしぼり えいざぶろう、1903年1月28日 - 1989年4月13日）は、日本の著名な登山家であり、無機化学者、さらに技術者としても知られています。彼はその業績から、日本の工業発展に大きく寄与し、また登山の分野でも重要な役割を果たしました。更には、従四位を叙せられるなど、国家に対する貢献も評価されています。

出身と学問の道

京都府に生まれた西堀は、京都一中や三高を経て、京都帝国大学理学部化学科を卒業しました。その後、大学では講師や助教授として教壇に立つ一方で、1936年には理学博士号を取得し、論文では「分子線による化學的研究」を発表しました。彼の学問的な基礎は、後の技術者としての活動にも大きく影響を及ぼしました。

技術者としての業績

西堀は、京大での教職を経て東京電気（東芝）に移り、この企業での技術本部長としての役割を果たしました。彼は当時海軍からの依頼をうけて真空管の開発に着手し、「ソラ」という製品を市場に送り出しました。この開発においては、材料不足の状況でも大量生産が可能な製造マニュアルが整備され、その完成度の高さが評価されました。これにより技術院賞を受賞することになります。

戦後、西堀は独立して技術コンサルタントとして活動し、統計的品質管理の手法を日本の製造業に取り入れました。この功績により、デミング賞や電電公社総裁賞を受賞し、彼は日本の工業発展の基盤を築く一助となりました。

登山家としての活動

西堀は、学問だけでなく登山にも多大な情熱を注ぎました。特に、彼は日本初の8000メートル級登山計画であるマナスル登山に関わり、ネパール政府との交渉を手掛けました。また、第1次南極観測隊の副隊長及び越冬隊長を務めたことでも知られています。

個人的なエピソード

幼少期から、科学に興味を持ち、1メートルの小型気球を製作したり、一人で電車を使って鳴尾の飛行機観覧に行くなど、冒険心旺盛な一面を見せていました。また、高校時代にはアインシュタインの通訳を担当したこともあり、語学にも秀でていました。彼の私生活においても、友人であり登山仲間である今西錦司との親密さが際立っており、彼の妻も今西の妹でした。

さらに、彼は登山の後進を育成するべく、著名な登山家植村直己に六分儀の使い方を教えるなど、その技術を伝承する役割も担っていました。

1973年には、ネパールの未踏峰ヤルン・カンの登山隊長として5500メートルのベースキャンプへと出かけ、宇宙塵の収集など新しい挑戦にも取り組みました。

著作と受賞歴

彼はさまざまな著書を執筆しており、特に『南極越冬記』や『百の論より一つの証拠―現場研究術』などの著作が評価されています。また、1973年には勲三等旭日中綬章を授与され、その業績が広く認められました。

西堀栄三郎記念 探検の殿堂

彼の業績を讃える形で、滋賀県に「西堀榮三郎記念 探検の殿堂」が設立され、彼の遺産を後世に伝えるための取り組みが行われています。

西堀栄三郎の生涯は、科学と冒険が融合した独自のものであり、彼の行動と思想は、今も多くの人々に影響を与え続けています。

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