西常雄

西常雄：平和と芸術の軌跡を刻んだ彫刻家

西常雄（にしつねお、1911年10月23日-2011年3月31日）は、20世紀日本の彫刻界において重要な役割を果たした彫刻家です。東京美術学校（現東京藝術大学）在学中には早くも帝展に入選し、その才能を認められました。卒業後は新制作派協会に参加、新作家賞を受賞するなど、同世代の作家の中でも頭角を現していきます。戦後は新制作派協会会員として活躍する一方、武蔵野美術大学、東京造形大学、多摩美術大学などで教鞭をとり、後進の育成にも尽力しました。

西常雄の芸術活動は、彫刻制作にとどまりません。1960年代には美術家平和会議の代表として、美術展の開催や原爆犠牲者の肖像画制作など、平和運動にも積極的に関わりました。彼の活動は、芸術表現が社会に与える影響を深く認識していたことを示しています。戦争体験が彼の平和への強い意志を形成したことは想像に難くありません。兵役で蒙古や中国を転戦した経験は、後の彼の活動に深く刻まれているはずです。

彼の作品は、多摩美術大学美術館やいわき市立美術館をはじめ、各地の公的施設に収蔵されています。野外彫刻も多く手がけ、人々の身近な場所で芸術に触れる機会を提供しました。これらの作品は、西常雄の繊細な感性と力強い表現力を物語っています。個展も現代彫刻美術館や銀座の画廊などで開催され、晩年まで精力的に創作活動を続けました。

西常雄の経歴をたどってみると、彼の多様な活動が浮かび上がってきます。東京生まれで麻布中学校を経て東京美術学校彫刻科に入学。在学中に帝展に入選したのち、卒業後は新制作派展で新作家賞を受賞。戦後には新制作派協会会員となり、美術教育にも携わります。中原悌二郎賞を受賞するなど、評価は高く、多摩美術大学教授も務めました。

1952年には、もく星号墜落事故で亡くなった友人の遺品である宝石の収集に同行したという興味深いエピソードも残されています。この出来事が彼の芸術観や人生観にどのような影響を与えたのか、想像力を掻き立てられます。佐藤忠良ら著名な作家たちとの交流や、九条の会への参加など、彼の活動は芸術の枠を超え、社会的な視点も持ち合わせていました。

西常雄は、99歳で肺炎のため永眠しました。彼の残した作品と活動は、これからも多くの人々に感動と勇気を与え続けるでしょう。彼の芸術は、平和への願いと、人々への深い愛情を込めたものであったと、私たちは確信できます。西常雄という彫刻家は、単なる芸術家という枠を超え、時代を反映し、社会に貢献した稀有な存在だったと言えるでしょう。彼の作品は、日本の現代彫刻史において重要な位置を占め、後世への貴重な遺産となっています。西常雄の功績は、これからも高く評価され続けるに違いありません。

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