西明石駅列車脱線事故

西明石駅列車脱線事故

1984年10月19日、国鉄（現JR）山陽本線の西明石駅構内で、寝台特急「富士」が脱線しホームに激突する事故が発生しました。この事故は、機関士の飲酒運転と、保守作業に伴う通過ルート変更の見落としによる速度超過が重なり発生しました。

事故の概要

午前1時48分頃、宮崎発東京行きの寝台特急「富士」（EF65 1099機関車＋24系25形客車14両編成）が西明石駅を通過中、機関車と最後尾の電源車を除く客車13両が脱線しました。先頭の13号車はホームに激突し、車体側面が大きく損傷しました。幸い、死者は出ませんでしたが、32名が負傷しました。

事故当時、西明石駅では保守作業が予定されており、「富士」は通常の列車線ではなく電車線を経由するよう指示されていました。機関士と機関助士には、点呼でこの変更が伝えられていましたが、機関士はこれを失念。機関助士も、かつての職場の雰囲気を恐れて機関士に注意を促すことができませんでした。

制限速度60km/hの分岐器を、通常の100km/h近い速度で通過したため、遠心力により客車が傾き脱線。そのまま先頭客車がホームに激突しました。深夜帯の事故でしたが、激突箇所が寝台ではなく通路側だったことが、被害を最小限に食い止めた要因となりました。

事故後の調査で、機関士が飲酒していたことが判明し、世間に衝撃を与えました。さらに、後続の「さくら」の機関士も、「富士」の機関士に誘われ飲酒していたことが明らかになりました。

事故の影響

この事故は、国鉄の体質的な問題点を浮き彫りにしました。乗務員が乗務前に飲酒していたこと、さらに、上司への注意喚起を躊躇するような職場の雰囲気など、国鉄の安全管理体制に対する批判が高まりました。特に、過去にも寝台特急の機関士による飲酒運転事故が発生していたこともあり、国鉄への信頼は大きく失墜しました。

事故後、国鉄は自動列車停止装置（ATS）に速度照査機能を持たせた「H-ATS（現在のATS-P）」の開発に踏み切りました。また、当時は運転席と客室を遮るブラインドの開放が義務付けられていましたが、労働組合の反対でブラインドは閉鎖されたままでした。実際には、乗務員の喫煙や飲食が横行しており、ブラインドに小さな穴を開けて隠蔽工作をするなどの行為も行われていました。

この事故は、国鉄分割民営化を加速させる契機の一つとなりました。鉄道ファン層ですら、国鉄の体質に失望し分割民営化に賛成する声が高まりました。鉄道評論家の種村直樹氏は、国鉄分割民営化に懐疑的でしたが、この事故を受けて「一度解体して血を入れ替えた方が良いのではないか」と述べています。

この事故で、事故列車の先頭客車であるオハネフ25 104が廃車となりました。

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外部リンク

* 昭和59-60年 阪神優勝・日本一！（3/3） - 事故現場の写真が掲載されています。

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