西湖蝙蝠穴およびコウモリ

西湖コウモリ穴：神秘的な溶岩洞穴とコウモリの楽園

西湖コウモリ穴は、山梨県富士河口湖町、富士五湖の一つである西湖の西岸に位置する溶岩洞穴です。この洞穴は、1929年に国の天然記念物に指定され、その価値は地質学的にも生物学的にも高いと評価されています。標高925m、青木ヶ原樹海の北東端に位置し、原生林の中にひっそりと口を開けています。

洞穴の形成

約1100年以上前の貞観大噴火によって流れ出した溶岩流によって形成された青木ヶ原樹海。その溶岩流が、かつて存在した剗の海（せのうみ）を埋め、現在の西湖と精進湖が誕生しました。西湖コウモリ穴は、この溶岩流が湖に流れ込んだ末端近くに位置しています。そのため、大量の溶岩が湖水と接触し、水蒸気の供給を受けたことで、複数の空洞が連結し、複雑な迷路状の構造を形成したと考えられています。総延長386.5メートルと、富士山麓の溶岩洞穴の中でも規模が大きく、その内部は非常に興味深い景観を作り出しています。

洞内の見どころ

洞内は、一般公開されており、最低限の照明設備が整備されています。ヘルメットを着用して、以下の様な溶岩洞穴特有の地形や生成物を観察できます。

溶岩ドーム：水蒸気などのガスが集まってできたもので、高さ50cm、直径1.5m程度のドーム状の地形。
縄状溶岩：溶岩が流れた様子がわかる景観で、ロープを何本も並べたような縞模様が特徴的。
溶岩鍾乳石：天井から垂れ下がった滴のような形状で、マグマが冷えて固まったもの。
溶岩棚：洞穴の側面が剥がれ落ち、棚のように見える地形。
珪藻土線：珪藻の遺骸が付着した線で、かつての剗の海の湖面標高を示す貴重な痕跡。

コウモリの保護と回復

西湖コウモリ穴は、その名の通りコウモリの生息地としても知られています。しかし、かつては無秩序な立ち入りや開発によって、コウモリの生息数が激減しました。1990年代から始まった保護活動により、洞穴の入り口に防護柵が設置され、入洞制限が行われるようになりました。その結果、コウモリの数は徐々に回復し、現在では多くのコキクガシラコウモリが生息していることが確認されています。冬季は、コウモリの保護のため入洞が禁止されています。

周辺の自然

西湖コウモリ穴周辺は、針葉樹と広葉樹が密生する原生林に覆われています。昼でも暗い森の中は、苔類が地面を覆い、独特の雰囲気を醸し出しています。洞穴入り口までのトレイルでは、青木ヶ原樹海の植生を間近に見ることができます。また、隣接する西湖ネイチャーセンターでは、ガイド付きの青木ヶ原樹海ツアーや、クニマスの生態展示を見学できます。

アクセス

所在地：山梨県南都留郡富士河口湖町西湖2068
交通：
富士急行線河口湖駅からレトロバスで「西湖コウモリ穴」または「コウモリ穴入口」バス停下車
中央自動車道河口湖ICから車で約25分
入洞時間：9:00～17:00（最終受付16:40）、冬季（12月1日～3月19日）は入洞禁止

西湖コウモリ穴は、自然の驚異と生物の営みが共存する、非常に魅力的な場所です。訪れる際には、自然保護に配慮し、ルールを守って見学しましょう。

もう一度検索