西田半峰

西田半峰：エッチングの父と、はがき絵の巨匠

西田半峰（にしだ はんぽう、1894年 - 1961年）は、日本の版画界、そして美術商の世界に大きな足跡を残した人物です。三重県出身の彼は、本名西田武雄として生まれ、幼少期に横浜に移り住みました。横浜商業学校在学中には、すでに高い芸術性を示し、文部省美術展覧会に入選するなど、才能を開花させています。

その後、本郷洋画研究所でエッチング（銅版画）の技法を学び、その魅力に深く傾倒しました。彼の情熱は、単なる技術の習得にとどまりませんでした。彼は積極的にエッチングの普及に努め、1923年には東京で画廊「室内社画堂」を開設。これは、日本で最初の洋画商としての画期的な出来事でした。

1932年には、日本エッチング研究所を設立し、雑誌『エッチング』を創刊・編集。この功績から、「エッチングの父」と呼ばれるようになりました。同誌は戦時下に『日本版画』と改題され、1945年1月に廃刊になるまで、132号もの発行を続けました。研究所も「日本版画奉公会」と改名され、その略称「版奉」から、西田は「半峰」という号を名乗るようになりました。

戦災によって東京の画廊を失った後、西田は故郷である三重県に疎開しました。そこで彼は、日本近代美術史の研究に没頭する傍ら、新たな表現方法を探求します。

その探求の成果が、はがき絵でした。1952年から亡くなる1961年までの間、彼は驚異的な数の、26,744通ものはがき絵を制作し、全国の友人知人へ送り続けました。一枚一枚に込められた彼の情熱と、人々との繋がりは、現代においても、その温かさと創造性を伝えています。

西田半峰の人生は、芸術への情熱と、人々との交流を大切にした、波乱に満ちたものでした。エッチングの普及に尽力した画商としての功績、そして晩年の精力的なはがき絵制作は、日本の美術史において、独特の輝きを放っています。彼の生き様は、現代の私たちに、芸術の創造性と人間性の深さを改めて考えさせてくれます。彼は、単なる版画家や画商という枠を超え、時代を彩った稀有な存在だったと言えるでしょう。

西田半峰に関する情報は、三重県ホームページや津市ホームページの生涯学習課で確認することができます。これらの資料は、彼の生涯と作品の詳細について、より深く理解する上で貴重な助けとなるでしょう。

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