西田憲正

西田憲正氏は、1946年富山県生まれの実業家です。慶應義塾大学卒業後、大冷工業、聖徳電気工事とキャリアを重ね、1979年には聖徳電気工事の代表取締役に就任しました。しかし、西田氏の名前を世に知らしめたのは、ビジネスホテルチェーン『東横イン』の創業者としての活躍です。

1986年、友人からの依頼で東京・蒲田に東横イン1号店をオープン。従来のビジネスホテルとは異なる斬新な経営手法で、業績を伸ばしました。特に、女性を積極的に支配人に登用するなど、人材育成にも力を入れていた点が特徴的です。その結果、2011年3月時点での客室稼働率は71.9％と業界平均を上回り、売上高は621億円に達するまでに成長しました。

しかし、順風満帆な経営とは裏腹に、西田氏は重大な問題にも直面します。2006年、横浜日本大通り駅日銀前店の違法改造が発覚。最初の記者会見では不適切な発言で批判を浴びましたが、後の会見で深く反省の意を表しました。この事件を受け、西田氏は代表取締役社長を退任し、取締役会長に就任。委員会設置会社への組織変更も同時に実施されました。

表面上は経営の第一線から退いたように見えますが、東横インの株式の95％以上を西田氏が個人で保有する組織が所有していたため、実質的な経営権は西田氏の手にありました。後任社長にも西田氏と親交のある人物が就任しており、西田氏の影響力は依然として強かったと言えるでしょう。

さらに、2008年には東横イン松江駅前において、致死量を超える濃度の硫化水素が発生する事故が発生。これは、ホテル新築工事中に不法投棄された石膏ボードが原因でした。この事件に関与したとして、西田氏は2008年10月に逮捕され、2009年3月には懲役2年4月、執行猶予3年、罰金150万円の有罪判決を受けました。

西田氏の経営手腕は、東横インの成功という形で明確に示されています。しかし、違法改造問題や硫化水素発生事故といった一連の問題は、企業経営における法令遵守の重要性、そして倫理的な責任の重大さを改めて問いかけるものとなりました。これらの出来事は、西田氏自身のキャリアだけでなく、日本のビジネスホテル業界全体に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

西田氏は、『家族・友達・仕事のために自分を知ろう―人生を豊かにする内観』、『東横インの経営術―女性のセンスを生かして日本一のホテルチェーンを創る』といった著書も出版しており、経営者としての経験や考え方を広く世に伝えています。彼の波瀾万丈な人生は、成功と失敗、そして責任という複雑なテーマを私たちに突きつけ、多くの教訓を与えてくれます。これらの経験は、現代の経営者たちにとっても、貴重な学びとなるでしょう。

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