西田耕三 (国文学者)

西田耕三：近世・中世文学研究の第一人者

西田耕三氏(1942年 - )は、日本の国文学界において近世・中世文学研究に重要な貢献を果たした学者です。石川県に生まれ、東京大学文学部哲学科を卒業後、横浜市役所で勤務経験を積んだのち、学究の道を歩み始めます。東京都立大学大学院博士課程に在籍した後、熊本大学教養部助教授、教授を経て、2000年には近畿大学文芸学部教授に就任しました。2011年に退職されました。

西田氏の研究は、近世文学と中世文学にまたがり、多岐にわたる深遠な知見を示しています。特に、近世文学における主人公像の変遷や、仏教説話、説経節、仮名草子といったジャンルにおける物語構造、思想背景の解明に大きな足跡を残しました。

その業績は、単なる学術論文にとどまらず、一般読者にも分かりやすく魅力的に書かれた多くの著作に結実しています。代表的な著書として、『主人公の誕生 中世禅から近世小説へ』(2007年)では、中世禅の影響を背景に近世小説における主人公像の形成過程を丁寧にたどり、新たな視点を提示しました。この作品は、2008年にやまなし文学賞を受賞し、その学術的価値と一般への浸透力の高さを証明しています。

さらに、『生涯という物語世界 説経節』(1993年)、『人は万物の霊 日本近世文学の条件』(2007年)、『近世の僧と文学 妙は唯その人に存す』(2010年)、『怪異の入口 近世説話雑記』(2013年)、『啓蒙の江戸 江戸思想がよびおこすもの』(2017年)、『八犬伝をみちびく糸　馬琴と近世の思考』(2021年)など、多様なテーマを扱った著作を多数発表。それぞれの作品において、綿密な史料分析に基づいた独自の解釈を展開し、近世文学研究に新たな地平を切り開きました。

編著書においても、西田氏は重要な役割を果たしています。『仏教説話集成』(1990-98年)の校訂など、古典籍の整理・研究にも尽力し、後世への貴重な資料提供を行いました。『仮名草子話型分類索引』(2000年)や『元禄文学を学ぶ人のために』(2001年)といった共編著書も、研究者や学生にとって必携の書となっています。

西田耕三氏の研究は、近世・中世文学への理解を深める上で欠かせないものとなっています。その著作は、専門家のみならず、文学に関心を持つ幅広い読者層に支持されており、日本の国文学研究に大きな影響を与え続けています。西田氏の研究成果は、今後も多くの研究者や読者に学び、啓発を与え続けることでしょう。

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