西角友宏

西角 友宏

日本のゲーム産業の黎明期を切り拓いた人物として、西角 友宏（にしかど ともひろ、1944年3月31日生まれ）の名は欠かせません。彼は革新的なゲームデザインとエンジニアリングの知識をもって、初期のアーケードゲーム、特にビデオゲームの発展に大きく貢献しました。中でも、彼が開発した『スペースインベーダー』は、単なるゲームの枠を超え、社会現象を巻き起こし、後のゲーム業界に計り知れない影響を与えた歴史的な作品です。現在も株式会社タイトーのアミューズメント開発部アドバイザーなどを務め、ゲーム文化の継承と発展に貢献しています。

経歴

大阪府岸和田市で生まれた西角氏は、東京電機大学工学部電気通信工学科を卒業後、音響機器メーカーでの勤務を経て、1969年にタイトーの子会社であったパシフィック工業に入社しました。後にタイトー本体へ移籍し、ゲーム開発のキャリアを本格的にスタートさせます。当初は、機械的な仕掛けを多用したエレメカ（エレクトロメカニカルゲーム）のエンジニアとして経験を積みました。

しかし、海外で登場したビデオゲーム『ポン』や、計算処理を行うCPUの存在を知るにつれ、彼はゲーム開発の未来を予見します。これまでのエレメカのように、ゲームごとに部品を物理的に作り直すのではなく、集積回路に記録されたデータを書き換えるだけで、ゲームバランスの調整や全く新しいゲームの開発が容易になるという、ソフトウェア開発の大きな利便性を見抜いたのです。この洞察が、彼を日本のアーケードビデオゲーム開発の最前線へと駆り立てる原動力となりました。

主な作品と功績

タイトー移籍後、西角氏は多くのアーケードゲームを手がけました。特に注目すべきは、1973年に発表された『サッカー』です。これは、日本で初めて開発されたアーケードビデオゲームとされており、その後の国内ビデオゲーム産業の礎を築く画期的な一歩となりました。続けて、『バスケットボール』、『スピードレース』、『ウエスタンガン』といった、ビデオゲーム黎明期における重要な作品を次々と開発しました。

そして1978年、彼の代表作にしてゲーム史に残る傑作『スペースインベーダー』が誕生します。画面上部から迫りくるエイリアン群を、自機を左右に移動させて迎え撃つシンプルながらも中毒性の高いこのシューティングゲームは、またたく間に日本全国を席巻しました。ゲームセンターには長蛇の列ができ、「インベーダーハウス」と呼ばれる専門店舗が登場するなど、一大ブームを巻き起こし、後のビデオゲーム産業の爆発的な成長を牽引する起爆剤となりました。彼はこの成功を受けて、『スペースインベーダーパートII』などの関連作品も開発しています。

退社後の活動と現在

『スペースインベーダー』の成功をはじめ、日本のゲーム産業の基礎を築いた西角氏は、1996年にタイトーを退社しました。その後2年間は非常勤の技術顧問として関わりつつ、有限会社ドリームスを設立し、代表取締役として新たな事業や後進の育成に尽力しました。後に会長を務めた後、ドリームスからも退いています。

2024年現在、彼は再びタイトーのアドバイザーとして、その豊富な経験と知識を活かしています。また、ゲーム文化の保存と振興を目的とするゲーム保存協会の名誉会員にも名を連ねており、日本のビデオゲーム黎明期を知る貴重な証言者として、様々な活動に参加しています。彼が開発した初期の作品の一部は、現在もタイトーによって保管されており、往年のゲームファン向けのイベントや展示会などで公開される機会もあります。

西角友宏氏の生涯と、革新的なゲーム開発への取り組みについては、専門書籍や学術機関によるオーラルヒストリーとして詳細に記録されており、日本のゲーム史研究における貴重な資料となっています。

代表的なゲームリスト

サッカー (1973)
スピードレース (1974)
ウエスタンガン (1975)
スーパースピードレース (1977)
スペースインベーダー (1978)
ルナレスキュー (1979)

※上記はアーケードビデオゲームの一部抜粋です。

西角友宏氏の功績は、単に多くのゲームを生み出しただけでなく、技術の進化を見据え、新しいエンターテインメントの形を創造した点にあります。彼の pioneering spirit は、今日の日本のゲーム産業の繁栄へと繋がる重要な一歩だったと言えるでしょう。

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