西道諸王

西道諸王の概説

西道諸王（せいどうしょおう）は、モンゴル帝国の創設者であるチンギス・カンの子孫にあたる王家の総称で、主にモンゴル高原の西方に広がる地域を統治しました。彼らはジョチ、チャガタイ、オゴデイ、コルゲンの系統を引く諸王であり、史料的には「西方諸王」または「右翼諸王」としても記録されています。

他方で、チンギス・カンの弟たち、特にジョチ・カサルやカチウンに由来する東道諸王は、モンゴル高原の東方を支配していました。これらの諸王家は、東道諸王、東方諸王、あるいは左翼諸王と呼ばれています。顕著な違いは、東道諸王がモンゴル帝国のカアンの直下に位置し続けたのに対し、西道諸王は中央アジアや東欧で自立した政権を樹立した点です。彼らは、ジョチ・ウルス、チャガタイ・ウルス、オゴデイ・ウルスと呼ばれる領域を形成し、モンゴル帝国崩壊後もその影響を残しました。

名称の由来

「西道諸王」という名称は、モンゴル高原や周辺地域を結ぶ重要な交易路であるシルクロードを支配し、多くの交易を取り仕切った王家の意味を含んでいるとされています。これに対し、東道に属する諸王家は「アバガ（叔父）」と称されることが多かったのに対し、西道諸王はしばしば「アカ（兄）」と呼ばれることが記録に残っています。

歴史的背景

モンゴル帝国は1206年にチンギス・カンによって創設され、彼は新たに統治する遊牧民を整然とした千人隊（ミンガン）に再編成しました。具体的には95の千人隊が成立し、その内訳として西道諸王には12の千人隊と広大な西方遊牧地が与えられました。東道諸王にも同じく12の千人隊と遊牧地が分け与えられましたが、興味深い点は、各王家が西道諸王の中で地位が平等に扱われたことです。これは、進むべき方向性が明確に定められていたことを示しています。

また、チンギス・カンは自らを含めた三極の指導体制を整え、中央軍（コルン・ウルス）、西道諸王、東道諸王の三者がバランスを保ちながら帝国の支配を行いました。特に西道諸王は、それぞれの勢力間で厳しい競争が繰り広げられ、カアンの称号を巡って対立が続いたのです。これに対し、東道諸王はオッチギン王家を中心に政治的調和を保とうとしており、両者の違いが顕著でした。

このように西道諸王へは特定の目的のために領土が分配されており、彼らはモンゴル軍が利用する通行路の開発と整備に貢献しました。特に、チンギス・カンの遠征において新たに確保されたルートは、ジョチ家、チャガタイ家、オゴデイ家がそれぞれの戦略に基づいて軍事行動を起こす基盤となりました。

西道諸王の影響

チンギス・カンの死後、ジョチ家は特にカアンの座を巡る争いが激化し、他の家系との力関係が変化していきました。モンゴル帝国は最終的に各王家が分裂するものの、ジョチ・ウルスやチャガタイ・ウルスなどの後継国家が中央アジアや東欧に誕生することにより、その影響力が持続しました。これらの王家は、地域の歴史形成において重要な役割を果たし、多様な民族や文化が交わる基盤を築くことになりました。

参考文献

• - 岡田英弘『モンゴル帝国から大清帝国へ』藤原書店、2010年
• - 白石典之『チンギス・カンとその時代』勉誠出版、2015年
• - 杉山正明『モンゴル帝国と大元ウルス』京都大学学術出版会、2004年

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