西野皓三

西野皓三：バレエから呼吸法へ、94年の生涯を彩った多様な才能

西野皓三(1926-2021)という名は、バレエ、テレビ制作、武道、そして独自の呼吸法「西野流呼吸法」といった、一見すると無関係に思える複数の分野で活躍した人物を指します。彼の生涯は、才能と情熱、そして探究心で彩られた、まさに波乱に満ちたものでした。

宝塚歌劇団からバレエ界へ

大阪府出身の西野は、大阪市立医専(現大阪市立大学医学部)在学中に宝塚歌劇団男子部に入団。その後、本格的なバレエを学ぶため、東勇作バレエ団に留学。宝塚歌劇団のバレエ教師や振付師としての活動を経て、1951年にはニューヨークのメトロポリタン・オペラ・バレエスクールに留学するなど、バレエダンサーとしてのキャリアを築き上げました。帰国後は1953年、西野バレエ団を結成。古典バレエから現代バレエまで幅広い作品を上演し、その構成・演出・振付を自ら手がけました。

テレビ界への進出と多様な活動

1950年代後半からはテレビ番組制作にも携わり、読売テレビの『バレエ・オムニバス』や『エビオス・バレエ劇場』の構成・振付を担当。NHK総合『歌のグランド・ショー』や日本テレビ『レ・ガールズ』など、数多くの番組制作に携わり、その才能はバレエの枠を超えて広く開花しました。映画制作にも関わり、松竹と西野バレエ団が提携した作品も複数手掛けています。国際的な活動も活発で、ブラジル国際音楽祭への参加やチリ国際音楽祭での審査員を務めるなど、グローバルな舞台で活躍しました。

合気道、中国拳法との出会い、そして「西野流呼吸法」の創始

50歳を過ぎてからは合気道に入門。合気道本部で植芝吉祥丸に師事し、師範の資格を取得、合気会評議員を務めました。さらに、大気拳師範澤井健一に師事し、中国拳法の師範にもなっています。
これらの武道経験、そして医学・バレエでの体の動きとメカニズムに関する深い知識を統合し、独自の健康法「西野流呼吸法(Nishino Breathing Method)」を創始しました。これは「気の力」に着目したもので、テレビ番組でも紹介され話題となりました。

「西野流呼吸法」の普及と研究

西野は東京と大阪に「西野塾」を開設し、「西野流呼吸法」の指導を行いました。塾生は老若男女を問わず、医者、大学教授、経営者、芸術家など多様な分野の人々が集まりました。科学的な解明を目指し、国内外の研究機関・大学と共同研究を行い、その成果は医学ジャーナルにも掲載されています。講演活動にも精力的に取り組み、医学関係の学会にも多数招聘されました。大阪国際女子大学客員教授や大阪市立大学大学院医学研究科客員研究員なども務めました。

西野バレエ団の育成とレ・ガールズ

西野バレエ団は1953年に結成され、当初はバレエダンサーの育成が中心でしたが、テレビ番組制作への進出を機に、活動拠点を大阪から東京に移しました。金井克子、原田糸子、由美かおる、奈美悦子など、数多くの著名なタレントを輩出しました。特に、バレエ団内のユニット「レ・ガールズ」は人気を博しました。晩年はバレエ公演は減少しましたが、芸能プロダクション運営や「西野流呼吸法」の普及活動に力を注ぎました。

多くの著書と論文

西野は「西野流呼吸法」に関する多くの著書を出版しており、日本語の他、英語、フランス語、イタリア語などにも翻訳されています。また、医学論文も発表し、その研究成果は高く評価されました。

94年の生涯に幕

2021年6月5日、心不全のため94歳で死去。その訃報は多くの関係者に衝撃を与えました。彼の教え子たちは、西野への深い感謝と別れを惜しむ言葉を述べています。西野皓三の功績は、バレエ、テレビ、武道、そして独自の呼吸法という多様な分野にわたって、人々の記憶に長く残り続けることでしょう。

もう一度検索