要素価格均等化定理

要素価格均等化定理

要素価格均等化定理（The factor price equalization theorem）は、国際貿易がもたらす影響として、各国間での生産要素の価格が均等化することを示す理論です。この概念は、1948年にノーベル経済学賞受賞者であるポール・サミュエルソンによって提唱され、ヘクシャー＝オリーン・モデルから導かれます。これにより、貿易が経済に与える結果を簡潔に表現することが可能となります。

基本的な仮定

この定理を理解するためには、特定の設定を考える必要があります。2つの国が存在し、各国が2種類の財（商品）を生産し、それぞれの国で生産に用いられる2種類の生産要素（資本と労働）があると仮定します。ここで重要なのは、生産技術が両国で同一であるとし、自由貿易が行われている状況を考えることです。また、生産要素の国際的な移動は想定していません。

貿易の影響

労働が豊富な国と資本が豊富な国が存在する場合、自由貿易が導入されると、各国の生産要素の価格がどのように変動するのかを考えてみましょう。貿易が始まることで、自国の労働の相対価格は上昇し、外国では資本の相対価格が上昇します。つまり、労働豊富国では賃金が上昇し、資本豊富国では資本のレンタル価格が上昇することが見込まれます。

この背景には、各国において安価な生産要素の価格が上昇し、高価な生産要素の価格が低下するメカニズムがあります。閉鎖経済においては、豊富に存在する生産要素の価格は低い傾向があり、貿易開始時にこれが変動する訳です。結果として、各国間で生産要素の価格は均等化します。

完全競争市場における限界生産物価値

完全競争市場においては、生産要素の価値は「限界生産×財の価格」に等しいとされます。この限界生産は、労働者の雇用量や資本の量によって影響を受けます。例えば、ある産業で雇用される労働者が増加すると、その産業での労働の限界生産は逓減します。一方で、資本の量が増加すれば、労働の限界生産は上昇します。このように、限界生産物価値は財の価格に依存するため、貿易を通じて財の相対価格が均等になることが、要素価格均等化において重要なポイントとなります。

記事の重要性

要素価格均等化定理は、国際貿易が生産要素の価値に与える影響を理解する上での基礎を提供します。この定理によれば、貿易が始まると、各国間で同じ産業の賃金が近づいていくことが示されており、経済学的な観点から非常に重要な理論です。

実際には、アバ・ラーナーによって1933年にこの理論が示されていましたが、彼の研究結果はポール・サミュエルソンの論文が発表された約4年後の1952年に公表されました。ラーナー・ダイアグラムは、今でも国際貿易理論を学ぶ上で重要なツールとして利用されており、経済学の教育において広く適用されています。

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