覆刻

覆刻（ふっこく）とは、古書や古文書などの貴重な資料を、可能な限り原本に忠実な形で複製し、出版することを指します。複製本やリプリントとも呼ばれます。

覆刻の定義と特徴

覆刻は、単なる再版とは異なり、原本の持つ特徴をできる限り再現することに重点が置かれます。具体的には、以下のような点が挙げられます。

原本に忠実な複製: 紙の質、サイズ、装丁、文字の配置など、原本のあらゆる要素を可能な限り再現します。
誤字脱字の再現: 原本に誤字脱字がある場合、それらも忠実に再現されることがあります。これは、原本の歴史的価値を尊重するためです。
重版・重印との区別: 原版を使用して印刷する場合は、重刷または重印と呼び、覆刻とは区別されます。

覆刻本の種類

覆刻本には、いくつかの種類があります。

完全覆刻本: 紙質、サイズ、装丁など、原本のすべてを忠実に再現したものです。誤字脱字もそのまま再現されます。
* 影印版: 原本の本文のみを忠実に複製し、紙質や装丁は異なるもの。注釈や解題が加えられることもあります。

翻刻との違い

翻刻（ほんこく）とは、原本を元に新たに版を起こして出版することです。特に、写本に基づいて刊本を出版する場合や、唐本に基づいて和刻する場合に用いられます。現代では、写本や木版本などの古籍を活版印刷するような、本文の字句そのものだけを忠実に複製した複製本を指すことが多いです。

覆刻と翻刻の違いは、覆刻が原本の再現に重点を置くのに対し、翻刻は内容の伝達に重点を置く点にあります。

覆刻の意義

覆刻は、貴重な文化財である古籍を後世に伝える上で重要な役割を果たします。原本は保存上の制約があり、一般の人が直接手に取って見ることは難しい場合があります。しかし、覆刻本を通して、多くの人が古籍に触れ、その内容や美しさを知ることができます。

また、研究者にとっても、覆刻本は重要な研究資料となります。原本を直接参照することが難しい場合でも、覆刻本を通して研究を進めることができます。

覆刻は、過去と現在をつなぐ貴重な架け橋と言えるでしょう。

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