覆土 (考古学)

覆土（ふくど）について

覆土とは、考古学の分野で使用される用語で、遺構内部に堆積した土の層を指します。しばしば「埋土」や「まいど」とも呼ばれるこの覆土は、遺構の性質やその廃絶の過程についての情報を含むことがあります。ただし、その中には単に自然に流れ込んだ土も存在します。

一般的に、覆土が提供する情報は、遺構がどのようにして廃絶されたのか、またその過程が緩やかであったのか急激であったのかを知るための手がかりとなります。また、地下式の坑道や窯跡などでは、天井が崩落したのかどうかを掴むための情報も得られます。考古学者は、覆土を調査する際に「セクションベルト」または「土層ベルト」と呼ばれる部分を残し、その土層を観察することで遺構の埋没過程や廃絶過程を推測します。

覆土の中には、遺構に関連する特異な情報が含まれている場合があります。たとえば、火災によって焼失した竪穴建物の跡などでは、その建物に使用された木材が焼けた痕跡が覆土に見られることがあります。これにより、当該建物がどのような木材で構成されていたのか、またその木材の年輪や放射性炭素の測定に利用できるサンプルを見つけることができることがあります。さらに、珪藻や花粉などの微化石を通じて、当時の環境の様子を理解することも可能です。

埼玉県に位置する吹上貝塚においては、竪穴建物の跡が貝層で覆われており、その下からほぼ完全な形態の土器が出土しました。この土器の出土層の下は、遺物のない層が覆土として観察されています。これは、建物が構築されたのちに一定の期間使用された後、廃絶に至るまでの過程で、土器が廃棄され、その後に貝が廃棄されるという人間行動のサイクルが示されています。この観察によって得られた「吹上パターン」は、考古学者の小林達雄により提唱されたものです。

覆土の研究は、過去の人々の生活様式や環境を理解するための重要な手段です。これにより、考古学者たちは時代や場所ごとの文化や社会構造を探求しています。また、覆土は遺跡の保存状態の評価にも関与しており、考古学的な発掘調査において大きな役割を果たしています。特に、時間の経過に伴って蓄積される土層は、地層年代学や環境考古学の研究においても貴重な情報源となります。これらの情報は、過去の文明がどのように発展し、変化していったのかを理解するための手助けとなっています。

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