親指のうずき

親指のうずき (By The Pricking of My Thumbs)

『親指のうずき』は、アガサ・クリスティが手掛けた『トミーとタペンス』シリーズの一作で、1968年に公開されました。物語は、老夫婦であるトミーとタペンス・ベレズフォードが叔母を訪れたことから始まります。彼らは、叔母が住む老人ホームから失踪した老人を探し続け、同時に過去に起こった連続殺人事件にかかわることになります。この小説のタイトルは、シェイクスピアの『マクベス』からの引用で、「邪悪な何かがやってくる」という意味を持つ台詞から取られています。

あらすじ

物語は4部構成になっており、各部には深町眞理子による訳題があります。最初の部、サニー・リッジでは、トミーとタペンスは老人ホームを訪れ、そこで出会ったランカスター夫人との会話の中に奇妙な意味を感じ取ります。彼女は突然の質問を投げかけ、後の展開に大きく関わる謎のあたりを見せます。

その後、トミーの叔母エイダが亡くなり、その葬儀の際に夫妻はランカスター夫人がどこへ行ったのかを不審に思います。ホームの責任者は、彼女が他の女性に引き取られたと語りますが、タペンスは彼女が事件に巻き込まれたのではないかと疑念を抱くようになります。

運河の家

続く第2部では、タペンスが叔母の絵に描かれた家を探しにサットン・チャンセラーという村へ向かいます。そこで彼女は、村の住人たちと出会い、そこに秘められた過去の事件についての話を聞きます。特に、村周辺で起きた連続幼女殺害事件についての情報は、物語の核心に迫る重要なつながりになります。タペンスはその際、謎の手紙を見つけますが、突如として襲われ、意識を失うのです。

失踪—主婦

第3部では、トミーがタペンスの行方を追い、戯曲の謎を解き明かそうと奮闘します。さまざまな人物との接触や過去の事件との関連が明らかになる中、タペンスも回復し、自分の身に起きた出来事の記憶を取り戻そうとします。このとき、彼女が見つけたエイダのメモが、真実に近づく手掛かりとなります。

教会があって塔がある、扉をあければひとがいる

物語の最終部で、夫妻は再び行動を共にし、ランカスター夫人との思わぬ再会や、彼女の隠された正体を解明します。タペンスは、彼女が自身の過去と向き合い、連続殺人の背景を解き明かす瞬間を迎えます。この結末では、ついに事件の全貌が明らかになり、彼女がかつての犯罪とどのように結びついているのかが描かれます。

制作背景と評判

《親指のうずき》は、クリスティの他作品への回答として書かれ、読者の声が反映されています。フランシス・アイルズなどの批評家からは、気持ちの良い多幸感を持った作品と評価される一方、クリスティの全ての作品の中では最高傑作とは言えないものの、多くの要素が絶妙に絡み合った一作とされています。

この作品は、いくつかの映像化もされており、映画やテレビドラマでの表現でも楽しむことができます。具体的には、2005年にはフランスで映画化され、また2006年にはミス・マープルのエピソードとして放送されました。さまざまなメディアを通じて、クリスティの巧妙なストーリーテリングとキャラクターたちの人間ドラマが楽しめる一冊です。

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