観光協会

日本の観光協会：地域観光を支える組織

日本の観光協会は、地域における観光振興を担う重要な役割を担う団体です。その歴史は古く、戦前の名勝・景勝地の保護を目的とした「保勝会」にまで遡ります。都市計画法の制定に伴い「風致協会」なども設立され、それらが徐々に「観光協会」へと発展していきました。

現在、観光協会は都道府県や市町村単位で組織されており、それぞれ独自の活動を行っています。都道府県レベルの協会は、多くの場合、市町村レベルの協会の上部組織として捉えられがちですが、実際には独立した組織として運営されています。観光資源の豊かさや自治体の規模によって、観光協会の有無や数は異なり、観光資源が少ない自治体には存在しない場合もありますし、逆に複数の著名な観光地を抱える自治体では複数の観光協会が活動していることもあります。公益社団法人日本観光振興協会は、これらの都道府県レベルの協会の上部組織として位置付けられています。

財源と組織運営

観光協会の財源は、国や地方自治体からの補助金、会員からの会費、観光イベントの収益、各種団体からの事業委託などが主な柱となっています。観光施設や駐車場などを運営している協会は、それらの事業収益を財源として組織運営の安定を図ることができます。しかし、事業が赤字に陥った場合、意思決定機構の複雑さから迅速な対応が難しく、行政との間で責任の擦り付け合いが起こり、構造改革が遅れてしまうリスクも抱えています。最悪の場合、破産手続きを余儀なくされるケースもあることを、2018年に徳島市観光協会の事例が示しています。

組織形態は、公益団体として運営されています。都道府県や市レベルの協会は、多くの場合、社団法人や財団法人といった法人格を取得していますが、町村レベルの協会は任意団体であることが多いです。近年では、小規模ながらも活動的な観光協会の中には、特定非営利活動法人（NPO法人）への移行を進める動きも見られます。

意思決定は、年1回の会員総会で行われますが、実際には形式的な決算報告と予算案の審議が中心です。実質的な意思決定は、会員から選ばれた役員会（会長、副会長、理事、監事など）によって行われ、年に数回開催されます。地方自治体の首長や議員、商工関係団体から顧問や参与を迎えるケースもあり、事務局の体制が充実している場合は、役員会の機能が形骸化する傾向も見られます。専門委員会や作業部会が設置されることもあります。また、地域や組織の特性に応じて、株式会社として運営されている例（例：長野県南信州観光公社）や、NPO法人として運営されている例（例：千葉県印旛郡栄町観光協会）など、様々な形態が存在します。

欧米のDMOとの比較

欧米では、広域観光を推進するDMO（Destination Management/Marketing Organization：観光地域づくり法人）が盛んに設立されています。DMOは法人格を持ち、広域的な観光戦略を策定・実行する役割を担っています。一方、日本では、自治体ごとの観光協会は存在するものの、広域観光を担う組織は財政基盤が弱く、非常勤職員が多い調整連絡団体にとどまっているケースが多いのが現状です。そのため、近年、日本版DMOの設立が各地で試みられており、今後の動向が注目されています。

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