観無量寿経疏

『観無量寿経疏』（かんむりょうじゅきょうしょ）は、中国の僧侶である善導（ぜんどう）によって著された『仏説観無量寿経』（ぶっせつかんむりょうじゅきょう）の注釈書です。この書は全4巻で構成されており、各巻の冒頭に付された題名が異なるため、『観無量寿経疏』、『観経疏』（かんぎょうしょ）などと呼ばれます。また、4つの帖に分かれていることから、『観経四帖疏』（かんぎょうしじょうしょ）、略して『四帖疏』（しじょうしょ）とも呼ばれています。

概要

『観経疏』は、それまでの浄土教における『仏説観無量寿経』の解釈を大きく変えた画期的な書物です。しかし、中国においては広く普及することはありませんでした。その価値が注目されたのは日本においてであり、浄土宗の開祖である法然（ほうねん）が、この書を非常に重視しました。法然は、自身の主著である『選択本願念仏集』（せんちゃくほんがんねんぶつしゅう）の中で「偏依善導」（ひとえに善導に依る）と述べ、善導とその著書である『観経疏』を教学の根本としたのです。さらに、浄土真宗の開祖とされる親鸞（しんらん）も、『教行信証』（きょうぎょうしんしょう）の「行巻」末尾にある『正信念仏偈』（しょうしんねんぶつげ）の中で「善導独明仏正意」（善導、独り仏の正意を明かす）と称賛しています。このように、『観経疏』は日本の浄土思想の形成に計り知れない影響を与えた重要な書物です。

構成

『観無量寿経疏』は、以下の4巻で構成されています。

1. 観経玄義分巻第一（かんぎょうげんぎぶんかんだいいち）
『仏説観無量寿経』の根本的な意義を説いています。巻頭には「帰三宝偈」（きさんぽうげ）という偈頌が置かれ、経典に対する七つの視点を示しています。
2. 観経序分義巻第二（かんぎょうじょぶんぎかんだいに）
『仏説観無量寿経』の序文（導入部分）に対する注釈です。
3. 観経正宗分定善義巻第三（かんぎょうしょうしゅうぶんじょうぜんぎかんだいさん）
「観経疏 定善義」とも呼ばれ、経典の主要部分である定善十三観についての注釈が記されています。
4. 観経正宗分散善義巻第四（かんぎょうしょうしゅうぶんさんぜんぎかんだいよん）
経典の主要部分の後半である九品段、得益分、流通分、耆闍分に関する注釈と、後跋が収録されています。

これらの構成からもわかるように、『観無量寿経疏』は『仏説観無量寿経』を深く理解するための重要な手引きであり、浄土教の教義を学ぶ上で欠かせない文献と言えるでしょう。

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