角田健一

角田健一（つのだ けんいち）氏は、1951年2月3日に東京都で生まれた、日本の多才な音楽家です。彼はトロンボーン奏者としての顔を持つと同時に、作曲家、編曲家、そして自身のビッグバンドを率いるリーダーとしても精力的に活動しています。

氏の音楽の道は、東京藝術大学別科で始まり、その後、桐朋学園大学音楽学部へと進み、さらにはジャズ教育の世界的権威であるアメリカのバークリー音楽大学で研鑽を積むなど、国内外で幅広く学びました。特にバークリーでの学びは、その後のジャズミュージシャンとしてのキャリアに大きな影響を与えたと考えられます。

帰国後、彼は日本のジャズシーンを代表するいくつかの名門ビッグバンドでキャリアをスタートさせました。「宮間利之とニューハード」、「原信夫とシャープス＆フラッツ」といった歴史あるバンドでの活動を経て、その後「高橋達也と東京ユニオン」に主要メンバーとして参加。これらのバンドで培った経験は、彼が後に自身のバンドを結成し、リーダーシップを発揮する上で貴重な財産となりました。

「高橋達也と東京ユニオン」が1990年に解散した後、角田氏は新たな一歩を踏み出します。東京ユニオンのメンバーを中心に、自身の名を冠した「角田健一ビッグバンド」を結成したのです。このバンドは、彼の音楽的ヴィジョンを実現する場として、現在に至るまで活動を続けています。

プロとしてのキャリアを通じて、角田氏が一貫して活動の主軸に置いてきたのはビッグバンドという編成です。その経験から、大編成バンドならではの音の厚みやダイナミクス、アンサンブルの楽しさを広く人々に伝える活動にも情熱を注いでいます。彼のビッグバンドは、伝統的なスウィング・ジャズのスタイルを踏まえつつも、その音楽性は特定のジャンルにとどまりません。

特に、現代音楽の巨匠である武満徹の作品群を、ビッグバンドのためにアレンジし演奏する定期公演「もうひとつの武満徹」は、氏の音楽性の多様性と、ジャズの可能性を追求する姿勢を象徴する活動として知られています。この斬新な試みは音楽界で高く評価され、2007年度の文化庁芸術祭において、大衆芸能部門の優秀賞を受賞するという栄誉に輝きました。これは、ビッグバンドによるジャズ演奏が、単なるエンターテイメントに留まらず、芸術としても高い価値を持つことを示した事例と言えるでしょう。

近年、角田氏はさらに活動の領域を広げています。吹奏楽の分野にも積極的に関わるようになり、学校教育や市民バンドなどにおける管楽器音楽の普及・発展にも貢献しています。NHK BS2などで放送された番組「響け!みんなの吹奏楽」には、ゲストミュージシャンとして出演するなど、幅広い層に音楽の楽しさを伝える活動を行っています。

角田健一氏は、長年にわたりビッグバンドの最前線で活躍し、その演奏、作曲、編曲、そしてリーダーシップを通じて、日本のジャズシーンに多大な影響を与えてきました。伝統を尊重しつつも革新を恐れないその音楽性は、多くの後進ミュージシャンに刺激を与え、ビッグバンドという音楽文化の継承と発展に重要な役割を果たしています。

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