言論、出版、集会、結社等臨時取締法

言論、出版、集会、結社等臨時取締法の概要

概要

言論、出版、集会、結社等臨時取締法（昭和16年法律第97号）は、太平洋戦争中に施行された法律であり、国民の言論や集会、結社の自由を制限しました。この法律は、戦争遂行のために国民が団結し、秩序ある行動を促すことを目的とし、1945年に廃止されました。

制定の背景

太平洋戦争前、日本では大日本帝国憲法第29条により言論や結社の自由が法律の範囲内で保障されていました。しかし、戦争の激化に伴い、敵国による扇動や、無邪気な軽率な言動から生じるデマによる影響が懸念されました。これに対処する形で、本法は国民の自由を一定程度制限することを正当化し制定されました。

施行の経緯

本法は、樺太や関東州にも適用され、その内容は具体的に集会、結社、出版における許可制を導入しました。また、戦時下の特異な状況から、この法律は治安警察法の特別法として位置づけられました。制度下では、結社や新聞紙類の発行には内務大臣の許可が必要となり、不適切な活動は取り締まられました。

本法の特徴

1. 許可制の導入: 結社や集会は事前に許可を受ける必要があり、安寧秩序を害する恐れがある場合には許可が取り消されることがありました。
2. 新聞発行の制限: 新聞や出版物は、発行前に内務大臣の許可が必要であり、戦局に影響を与える情報の発信が抑制されました。
3. 造言飛語の制限: 戦時中のデマを防ぐため、虚偽または誇張された情報の流布に対し厳罰を科すことが定められていました。

実施状況と影響

本法律の施行に伴い、既存の団体は改めて許可申請を求められました。その結果、多くの団体が解散に追い込まれ、内務省は不穏当な団体については許可を与えない方針を採用しました。これにより、約500団体が申請を行ったが、半数以上が不許可処分にされる事態が生じました。

判例と反響

本法に基づく判例もいくつか存在し、特に造言飛語に関する規定は、具体的な発言内容が問題視されました。たとえば、ある被告人は義勇軍に関する発言をし、これが誇張とされて処罰されました。このような実例は、政府の情報統制の影響を示しています。

廃止とその後

言論、出版、集会、結社等臨時取締法は、終戦後の1945年に廃止されました。この法律は、戦時中の言論統制を象徴するものであり、その影響は戦後の日本における言論の自由の確立に向けた一歩とも捉えられています。

結論

言論、出版、集会、結社等臨時取締法は、国家の必要性に基づく公共の秩序維持を名目に国民の自由を制限した歴史的な法律です。その存在は、戦時下における政府の情報操作や制度の悪用について深く考えさせるものであり、現在の法制度にも示唆を与える事例となっています。

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