訥謨爾河

訥謨爾河（ネメルがわ）

訥謨爾河は、中国黒竜江省中北部を流れる河川であり、アムール川水系に属する嫩江（のんこう）の左岸支流です。この川は、歴史的に様々な名前で呼ばれてきました。満州語では「ネメル河（nemer bira）」と称され、中国の古文献では「訥黙爾」（『清会典』）、「納穆爾」（『盛京通志』）、「納木爾」（『龍沙紀略』）、「訥莫里」（『水道提綱』）などの漢字表記が見られます。

地理と概要

訥謨爾河は、小ヒンガン山脈の博克托山（はくとさん）の西北麓を源流とし、チチハル市の管轄区域を流れ、最終的に訥河市（県級市）で嫩江に合流します。全長は569kmに及び、通常時の水深は約2m、川幅は約60mです。しかし、夏から秋にかけての増水期には、水深は3〜4m、川幅は1〜2kmにまで広がることがあります。

主な支流

訥謨爾河には、いくつかの主要な支流が流れ込んでいます。

1. 老莱河（ろうらいがわ）：嫩江市の東吐沫山を水源とし、全長115kmの距離を経て訥謨爾河に合流します。
2. 南陽河（なんようがわ）：訥河市の龍河鎮にある青龍崗五山頭を源流とし、全長25kmで訥謨爾河に流れ込みます。
3. 石底河（せきていがわ）：帽児山の南麓から流れ出し、全長28kmで訥謨爾河に合流します。

これらの支流は、訥謨爾河流域の自然環境を形成する上で重要な役割を果たしています。

歴史的背景

訥謨爾河の名称に見られるように、この地域は歴史的に様々な民族の交流点でした。満州語に由来する名前からもわかるように、この地域はかつて満州族の活動範囲であり、その歴史と文化が深く刻まれています。また、古文書に複数の漢字表記が見られることは、この川が歴史を通じて様々な文書や記録に登場し、重要な地理的要素であったことを示しています。

流域の環境

訥謨爾河流域は、豊かな自然に恵まれています。小ヒンガン山脈に端を発するこの川は、多様な動植物を育み、地域の生態系を支えています。また、流域の農業や人々の生活にも深く関わっており、生活用水や農業用水として利用されています。しかし、近年では、人口増加や産業活動の活発化に伴い、水質汚染や生態系の変化が懸念されており、環境保全への取り組みが求められています。

まとめ

訥謨爾河は、黒竜江省の重要な河川の一つであり、その豊かな水は地域の自然環境と人々の生活を支えています。歴史的な変遷を経てきたこの川は、今もなお地域にとって重要な存在であり続けています。今後の環境保全活動によって、この川の豊かな自然が後世に引き継がれていくことが望まれます。

参考文献

承志『ダイチン･グルンとその時代』名古屋大学出版会、2009年
訥河県志編纂委員会『訥河県志』黒竜江人民出版社、1989年

関連項目

黒竜江（アムール川）
松花江（スンガリ河）
* 嫩江（ノン河）

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