評定河原事件

評定河原事件

評定河原事件（ひょうじょうがわらじけん）は、1948年（昭和23年）10月11日および10月12日にかけて、現在の宮城県仙台市太白区の評定河原グラウンドで発生した一連の出来事です。これは、当時の占領下日本において、在日朝鮮人社会と当局との間に生じた緊張を示す事例として知られています。

事件の背景

この事件の発端は、1948年9月9日に朝鮮民主主義人民共和国（北朝鮮）が樹立を宣言したことにあります。これに呼応した在日朝鮮人社会では、各地で北朝鮮の建国を祝う記念行事が計画されました。仙台でも、在日本朝鮮人連盟と在日朝鮮民主青年同盟が主催し、10月11日と12日の両日にわたり、評定河原グラウンドで祝賀大会を開催することとなりました。しかし、当時の日本を占領統治していた連合国軍総司令部（GHQ）は、北朝鮮国旗（人民共和国旗）の掲揚を禁じており、これが祝賀大会における潜在的な火種となりました。

大会1日目の状況

1948年10月11日、午前10時から祝賀大会の開会式が始まりました。会場では、GHQによる国旗掲揚禁止令を巡り、仙台市警察から参加団体に対して警告が行われる場面が見られました。しかし、この日はそれ以上の大きなトラブルに発展することはなく、比較的平穏のうちに初日の日程を終えました。

大会2日目の混乱と衝突

翌10月12日には、大会の主要行事として運動会が開催されました。国旗の正式な掲揚が認められない中、参加者の一部は国旗を模したものを頭上に掲げて行進を行いました。これを見た会場警備の米軍憲兵は、掲揚禁止に抵触する行為とみなし、行進の中止を命じました。一時的な中断の後、運動会は再開され、午後4時30分頃に閉会式を迎える運びとなりました。

しかし、閉会式が進行する最中、会場内に入り込んだ酒気を帯びた数名の参加者が歌を歌い始めました。この行動に他の参加者も同調する動きが見られ、やがて会場は騒然とした雰囲気に包まれていきました。興奮した一部の群衆は、赤旗を掲げてデモ行進を開始するなど、状況は緊迫の度合いを深めました。

混乱の中、特に問題となったのは、北朝鮮国旗を手にした一団がデモ行進を始めたことでした。彼らが米軍憲兵による再三の制止要求を無視し、そのまま行進を続けようとしたため、米軍憲兵は強制的な手段に出ました。憲兵は国旗を取り上げ、その場でデモを行っていた参加者の中から4名を拘束しました。さらにその後、米軍憲兵隊による捜査が実施され、事件に関与したとみられる関係者2名が追加で検挙されました。

その後の法的措置

この事件で検挙された計6名の参加者のうち、2名が起訴されることとなりました。彼らは米軍の軍事裁判所で裁かれ、それぞれに重労働3年の有罪判決が言い渡されました。

評定河原事件は、戦後の混乱期における在日朝鮮人社会の動向、占領軍の政策、そして日本の国内治安当局との関係性が複雑に絡み合った事例であり、当時の社会状況を理解する上で重要な出来事の一つとされています。

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