評決のとき

『評決のとき』（原題：A Time to Kill）は、1996年に公開されたアメリカ合衆国の法廷ドラマ[[映画]]です。ジョエル・シュマッカー監督によるこの作品は、ジョン・グリシャムの同名小説を原作としており、マシュー・マコノヒーとサミュエル・L・ジャクソンら豪華キャストが出演しています。特にマコノヒーにとっては出世作となり、ジャクソンは本作での演技が高く評価され、ゴールデングローブ賞助演男優賞にノミネートされました。

原作小説は、グリシャムの処女作として知られています。出版には多くの困難を経験しましたが、後にグリシャムが『法律事務所』『ペリカン文書』『依頼人』といったベストセラーを生み出すと、状況は一変しました。『評決のとき』も多くの出版社から出版を熱望され、ペーパーバック版とハードカバー版が相次いで刊行されました。そのため、初版本はコレクターの間で高い価値を持つこととなりました。2013年には、続編小説『Sycamore Row』がアメリカで出版されています。

物語は、アメリカ南部ミシシッピ州の架空の町クラントンを舞台に展開します。人種差別主義者の白人青年2人が10歳の黒人少女を強姦するという凄惨な事件が発生します。少女の父、カール・リー・ヘイリーは、この事件に深く傷つき、娘の無念を晴らすべく、自らの手で加害者2人を射殺します。

カールは殺人罪と傷害罪で逮捕され、地元の白人弁護士ジェイク・タイラー・ブリガンスが弁護を引き受けます。ジェイクはカールの怒りや悲しみを理解しつつも、彼の行動の危険性を認識し、事態の収拾に奔走します。この事件は、人種差別が根強く残るクラントンにおいて、黒人と白人の対立を激化させます。

裁判では、検事のルーファス・バックリーが、カールに死刑判決を下すべく、巧みな策略を展開します。ルーファスは、州知事選への出馬を企ており、この裁判を自身の知名度向上に利用しようとします。ジェイクは、公平な裁判を求めて裁判地の変更を申し立てますが、却下されます。しかし、その後、人種差別を理由に裁判地の変更が認められた判例を発見し、裁判長に提示することで、裁判を有利に進めようとします。

ジェイクは、カールの弁護活動を通じて、法曹界における人種差別や社会的不正義といった問題に直面します。また、熱心な法学生エレン・ロイドの協力を得ながら、様々な困難に立ち向かいます。エレンは死刑反対を訴える活動家であり、カールに死刑判決が下される可能性があるこの事件に強い関心を抱きます。一方、加害者側の家族やKKK(クー・クラックス・クラン)のメンバーは、カールに厳しい報復を加えようと暗躍します。ジェイク自身も、脅迫や襲撃を受け、危険な状況に置かれます。

裁判は、緊張感とスリリングな展開で進んでいきます。ジェイクは、カールの心神喪失を主張しますが、検事の執拗な追及に苦戦します。証人尋問や証拠提示を通して、人種差別問題、正義、復讐といったテーマが浮き彫りになります。裁判所内外では、黒人と白人の衝突が頻発し、社会不安が高まります。ジェイクは、家族や自身の身の安全を守るために、様々な困難を乗り越える必要に迫られます。

最終弁論では、ジェイクは、カールの行為が人種差別という社会構造の産物であることを訴え、陪審員に正義の判断を促します。この裁判を通して、アメリカ社会における人種差別問題が改めて問われることとなります。

映画は、批評家からも高い評価を得ており、Rotten Tomatoesでは67％、Metacriticでは54点という評価を得ています。長尺であることや、物語の表面的な描写を指摘する声もある一方、巧みな演出と優れた演技によって、高い評価を得ている点が注目されます。この作品は、人種差別、正義、復讐といった複雑なテーマを扱い、観客に強い印象を残す、傑作法廷ドラマとして知られています。

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