試作特種艦上偵察機

試作特種艦上偵察機

試作特種艦上偵察機（しさくとくしゅかんじょうていさつき）は、三菱航空機が大日本帝国海軍向けに開発した特殊な実験機です。社内では「2MR5」とも呼ばれ、主に航空機の浮揚性を向上させる実験を目的として設計されました。本機の開発は1927年（昭和2年）に始まり、アレクサンダー・バウマン技師の指導のもとに仲田信四郎と徳永薩男の両技師が主に担当しました。

機体の設計

試作特種艦上偵察機は、軽量な艦上偵察機として設計されました。木材と金属を組み合わせた骨組みと、羽布を張った複座の複葉機の形状を持っています。特筆すべき点は、下翼に装備されたスロッテッドフラップです。これにより「オーバル・ローア翼」と呼ばれる独特な翼形状を持ち、浮揚性を高めるために全金属製の水密構造が採用されました。しかしながら、操舵が重く、結果として操縦性には課題があり、パイロットからの評価はあまり良くありませんでした。このため、海軍による正式な採用には至りませんでした。

技術仕様

以下は、試作特種艦上偵察機の主要な諸元です。

• - 全長: 7.15 m
• - 全幅: 10.20 m
• - 全高: 3.129 m
• - 自重: 900 kg
• - 全備重量: 1,400 kg
• - エンジン: 三菱イスパノ・スイザ水冷V型8気筒（公称300 hp） × 1
• - 最大速度: 193 km/h
• - 航続時間: 5時間
• - 武装: なし
• - 乗員: 2名

試作特種艦上偵察機は、当時の航空機技術の進化を感じさせる一機であり、特に浮揚性能を考慮した設計は今も評価されています。尽管正式な制式採用には至りませんでしたが、日本の航空機開発史において重要な役割を果たした機体として位置づけられています。

参考文献

• - 野沢正 『日本航空機総集 三菱篇』 出版協同社、1961年
• - 松岡久光『みつびし飛行機物語』アテネ書房、1993年

興味深いことに、この機体の試作は、当時の航空技術の挑戦と可能性を示すものであり、後の航空機開発に多くの影響を与えました。

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