試製56式105mm自走砲

試製56式105mm自走砲

試製56式105mm自走砲（しせいごろくしき105ミリじそうほう）は、陸上自衛隊が1950年代に試作した自走式榴弾砲です。本車両は、米軍が提供したM24軽戦車のシャーシを基に開発されました。この試作車は、陸上自衛隊の装備の充実を図るために設計され、従来の牽引式火砲に代わる新しい装備として位置づけられていました。

開発の背景

1954年に設立された陸上自衛隊は、従来の保安隊から発展したものでした。当時、自衛隊の特科部隊は全ての火砲を牽引式で運用しており、その機動性や防御力に課題がありました。こうした状況を背景に、戦後初となる自走榴弾砲が求められ、1956年に本プロジェクトの開発要求が出されました。

当プロジェクトは、米軍のM37 105mm自走榴弾砲をモデルとしており、M24軽戦車の車体に105mm榴弾砲M2A1を搭載する設計が行われました。また、ディーゼルエンジンへの改造や新型変速機の採用によって、M24に匹敵する機動性の確保を目指しました。

設計は防衛庁技術研究所で進められ、1957年に完了しました。翌1958年には一次試作車SYが完成し、榴弾砲の改良は日本製鋼所、車体の改造は三菱重工業がそれぞれ担当しました。この新しい自走砲のデザインにはM37の影響が色濃く反映され、105mm榴弾砲を覆う箱型の戦闘室が特色です。戦闘室の右前方には自衛用の12.7mm重機関銃M2が取り付けられ、密閉式の設計が採用されています。

計画の中止

一次試作車は、第一次技術審査の際にエンジンの過熱問題が指摘され、改修作業が行われました。その後、第二次技術審査や寒冷試験などが実施され、トータルで3回の試験を経ていきました。これらの試験結果、走行性能の低下が明らかになり、改造による重量の増加が原因であることが判明しました。

それに対応する形で、変速機を換装した二次試作車が製作されましたが、残念ながら期待された性能を十分に発揮することはありませんでした。これ以上の性能向上は難しいと判断されたため、試製56式105mm自走砲の開発計画は中止に至りました。この中止により、陸上自衛隊はM44やM52といった新型の自走榴弾砲が導入されるまで、自走榴弾砲を持たない状況が続くこととなりました。国産の自走榴弾砲が正式に採用されるのは、74式自走105mmりゅう弾砲が登場した後のことでした。

参考文献

ガリレオ出版の『グランドパワー 2003年11月号別冊 陸上自衛隊の装備車両 Vol.1 '60年代編』は、試製56式105mm自走砲に関する貴重な情報源となっています。

関連項目

• - M24軽戦車
• - 105mm榴弾砲M2A1
• - 榴弾砲
• - 自走砲

外部リンク

• - 試製56式105mm自走砲SY（詳細）

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