日本製鋼所

株式会社日本製鋼所：日本の近代化を支えた総合機械メーカー

株式会社日本製鋼所（The Japan Steel Works, Ltd.）は、鋼板、鍛造品、鋳造品、プラスチック射出成形機、鉄道車両向け製品、さらには戦車や艦艇の火砲といった防衛機器までを手がける、日本の総合機械メーカーです。三井グループの一員であり、その略称は「日鋼（にっこう）」、または英語表記の頭文字から「JSW」と称されます。日経平均株価構成銘柄の一つでもあります。

歴史

日本製鋼所の歴史は、日本の近代化と深く関わっています。1907年（明治40年）、北海道室蘭市に、英国の技術を導入し、国産兵器を製造する目的で設立されました。設立には、北海道炭礦汽船株式会社、英国アームストロング・ホイットワース社、英国ヴィッカース社が出資し、製鋼事業においては安来製鋼所に次ぐ画期的な出来事でした。

太平洋戦争後、企業再建整備法によって解散しましたが、その資産と人材を基に、新たに株式会社日本製鋼所が設立されました。旧会社で培った鍛造・鋳造技術を生かし、発電所や化学プラント向けの特殊な鍛造品、射出成形機、各種産業機器を製造する一方、戦車や艦艇の火砲といった防衛機器の製造も継続しています。

また、首都高速道路江戸橋ジャンクションの曲線道路橋桁の鋳造にも携わったことで知られています。

事業拠点

日本製鋼所の製作所は、それぞれ異なる特徴を持っています。

室蘭製作所: 発電用蒸気タービン、原子力用部材、化学プラント向け鉄鋼製品、風力発電用風車のブレードやタワーなどを生産。
広島製作所: プラスチック・マグネシウム射出成形機、戦車や艦艇の火砲などを生産。
横浜製作所: レーザーアニール装置など電子機器用装置を生産。

過去には、産業用機械を生産する東京製作所や鹿島工場、軍需用機器を製造・補修していた宇都宮製作所、赤羽作業所、輪西工場なども存在しました。

設立の背景

日本製鋼所の設立には、帝国海軍との密接な関係と、外国資本の導入という二つの大きな特徴があります。

当時の海軍は、日露戦争の経験から兵器の国産化を目指していました。そのために、先進国からの技術導入が不可欠であり、北海道炭礦汽船の井上角五郎は、鉄道国有化による売却益を元手に製鉄事業への参入を計画していました。この計画に、呉鎮守府の山内万寿治中将が参画することで、兵器国産化を目的とした製鋼事業が具体化しました。また、技術導入先として、当時軍艦や兵器を多く購入していた英国のアームストロング・ウイットウォース社が選ばれ、日英合弁事業として進められることになりました。

日本製鋼所が室蘭に設立された背景には、当初室蘭に海軍の鎮守府を設置する計画があったものの、地勢的な問題から見送られたという経緯があります。そのため、利用されていなかった室蘭港が活用されることになりました。

沿革

日本製鋼所の歴史を年表形式でまとめると、以下のようになります。

1907年: 北海道炭礦汽船、アームストロング社、ヴィッカース社の共同出資により設立。
1911年: 室蘭に私立楽生病院（現・日鋼記念病院）を開設。
1915年: 本社を東京に移転。
1918年: 日本初の航空機用エンジンを室蘭製作所で完成。
1920年: 株式会社廣島製作所を買収、広島工場（現・広島製作所）とする。
1935年: 神奈川県に横浜工場を起工。
1936年: 横浜製作所竣工。
1938年: 東京府に武蔵製作所（旧東京製作所）を起工。
1945年: 太平洋戦争終戦、民需転換開始。
1950年: 企業再建整備法により旧会社解散、新会社設立。
1960年: 本社を日比谷三井ビルディングに移転。
1976年: 茨城県に鹿島工場を設置。
1987年: 東京製作所閉鎖。
2007年: 本社を東京都品川区のゲートシティ大崎ウエストタワーに移転。
2020年: 事業子会社「日本製鋼所M&E株式会社」を設立、名機製作所を吸収合併。

英語表記

日本製鋼所の英語表記はThe Japan Steel Works, Ltd.です。このため、新日本製鐵（現・日本製鉄）が設立された際、英語名にJapan Steelを用いることができず、Nippon Steel Corporationとしたという経緯があります。

株式市場での符丁

株式市場では、他の「日本セイコウ」という会社名との混同を避けるため、日本製鋼所株は「アーム」という符丁で呼ばれることがあります。

主要株主

主要株主については、有価証券報告書等で確認できます。

人材育成

日本製鋼所では、優秀な社員を産業技術短期大学に派遣し、人材育成に力を入れています。また、室蘭製作所には日本刀の鍛刀技術を継承する「瑞泉鍛刀所」があり、刀工を社員として抱えています。

CM出演者

過去には斎藤工さんをCMに起用していました。

まとめ

日本製鋼所は、日本の近代化とともに発展してきた、歴史ある総合機械メーカーです。高度な技術力と幅広い事業展開で、社会の発展に貢献しています。今後も、その技術力と革新性で、新たな価値を創造し続けることが期待されます。

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