誘電正接

誘電正接とは

誘電正接（ゆうでんせいせつ、英：dissipation factor、またはLoss tangent）は、誘電体内で発生する電気エネルギーの損失度合いを表す数値です。この指標は、特にコンデンサの性能評価において重要な役割を果たしています。原則として、誘電正接は「タンジェント・デルタ」とも呼ばれ、略して「タンデルタ」や「タンデル」とも表現されることがあります。

誘電正接の役割

理想的なコンデンサは、外部から供給された電荷を全くの損失なく蓄え、また放出することができます（図1）。しかし、現実のコンデンサにおいては、電極の抵抗や電極間の漏れ電流、さらには誘電体の分子の熱振動によるエネルギー損失（誘電損）が存在し、電荷をやり取りする際にエネルギーのロスが発生します。この損失は特に高周波交流信号が加わった際に顕著に現れます。

実際のコンデンサを等価回路で示すと、理想コンデンサと並列に寄生抵抗が存在します（図2）。理想コンデンサを通る電流を`I_c`、寄生抵抗を通る電流（エネルギー損失）を`I_r`とした場合、誘電正接は次のように定義されます。

$$
ext{誘電正接} = rac{I_r}{I_c}
$$

ここで、`δ`は損失角を示します。また、`I_r/I_c`は複素誘電率の実数部と虚数部の比率でもあります。

誘電正接の性能と望ましい範囲

コンデンサにとって、誘電正接の値が小さいほど良好な性能を示します。特に高周波特性においては、この数値が大きな影響を与えます。一般的に、良好な性能を持つコンデンサの誘電正接は、周波数1GHzにおいて0.002から0.02の範囲内になります。

誘電正接に影響を与える要因

誘電正接の値には、どのような要因が影響を及ぼすのでしょうか。

• - 印加する交流の周波数: 周波数が上がるにつれて、誘電正接も変動します。
• - 動作時の温度: 温度変化により、誘電体の特性も変化します。
• - 誘電体の材質: 材質ごとに異なる特性を持っており、それが誘電正接に影響を与えます。
• - コンデンサの構造: 構造によってもエネルギー損失の仕方が異なります。
• - 湿度: 湿度が高いと誘電体の特性が変化することがあり、誘電正接に大きく影響します。

中でも、周波数と湿度は誘電正接に特に強い影響を与えます。

測定方法

誘電正接は、LCRメータやブリッジ回路を用いて測定することができます。特に学校での実験実習では、後者の方式が一般的です。複数の周波数にわたっての誘電正接を測定することが通常の手法ですが、特定の周波数のみを用いる場合もあります。

関連項目

• - コンデンサ: 電気を蓄える素子。
• - 誘電体: 電場を受けて誘電正接が表示される物質。

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