諏訪頼満 (伊予守)

諏訪頼満と室町時代後期の諏訪氏抗争

室町時代後期、信濃国諏訪郡を勢力圏とした諏訪氏内部では、激しい抗争が繰り広げられました。その中心人物の一人である諏訪頼満は、諏訪氏の一族で、諏訪大社上社の神職の最高位である大祝の地位にありました。彼は伊予守の官職に就き、父は有継、兄は信満、そして息子には頼長と継満がいました。

当時、諏訪氏では惣領職と大祝職が別々に継承されるのが一般的になっていました。しかし、頼満の父・有継は、大祝職に就いたものの、後にその地位を失ったことで、惣領家と大祝家の関係は完全に断絶することになります。

この複雑な状況は、文安6年（1449年）に諏訪大社下社の大祝職を務める金刺氏との抗争によってさらに激化しました。金刺氏は信濃守護である小笠原政康と手を組み、諏訪氏に対抗しました。これに対して諏訪氏は、小笠原氏と敵対関係にあった松尾小笠原氏と同盟関係を結び、抗争は長期化しました。

諏訪氏は金刺氏を圧倒しましたが、今度は内部抗争が激化します。大祝家当主の頼満と惣領家当主の信満（安芸守）の間で「芸州・予州大乱」と呼ばれる抗争が勃発。この抗争は一時的に終息したものの、信満は居館を上原に移転せざるを得ない事態に陥りました。

両者の対立は、頼満の子・継満が大祝職を継承したことで再び表面化します。継満は松尾小笠原氏や高遠継宗と手を組み、惣領家に対抗しました。そして、文明15年（1483年）正月8日、悲劇的な事件が発生します。

『守矢満実書留』によると、継満は高遠継宗、金刺興春らと共謀し、惣領家当主の政満とその子息、弟らを饗宴の場で殺害しました。これにより、諏訪氏一族や社家衆は反発し、惣領家に加担して継満を干沢城に追い込み、諏訪郡高遠へと追放しました。この際に、頼満も討ち取られたと伝えられています。

その後、文明16年（1484年）、諏訪政満の次男・宮法師丸（伊予守頼満とは別人）が惣領家を継承し、さらに大祝職にも就任することで、惣領家と大祝家の分離は解消されました。

頼満の死によって、諏訪氏内部の抗争は一旦終息しますが、その複雑な経緯と、権力闘争の悲劇的な結末は、室町時代後期の諏訪氏の歴史を語る上で重要な出来事として認識されています。この事件は、当時の社会情勢や諏訪氏の内部構造、そして権力構造の脆さを示す一例として、歴史研究において重要な意味を持っています。様々な文献資料から、この時代の諏訪氏の状況を詳細に検討することで、より深く理解を深めることができます。

もう一度検索