謝国権

謝 国権

謝 国権（しゃ こくけん、1925年6月28日 - 2003年11月12日）は、昭和から平成にかけて活動した日本の医師であり、性医学評論家として多くの著作を世に送り出しました。特に、性に関する知識を分かりやすく解説した著書『性生活の知恵』は、当時としては異例のミリオンセラーを記録し、日本における性に関するオープンな議論や理解の促進に大きな影響を与えました。彼は奈良林祥氏やドクトル・チエコ氏らと共に、日本の性医学評論という分野を切り拓いた先駆者の一人として記憶されています。

人物と経歴

謝国権氏は、大正14年（1925年）6月28日、当時の東京府（現在の東京都）に生を受けました。彼の父は、台湾出身の著名な詩人であった謝溪秋（1892年-1959年）であり、国権氏はその三男でした。医学の道を志し、研鑽を積んだ謝氏は、昭和34年（1959年）に「新生児の核黄疸に関する研究」で日本医科大学から医学博士号を取得しました。

医師としてのキャリアを歩み始めた彼は、日本赤十字社本部産院（現在の日本赤十字社医療センター）の産婦人科で医局長を務めました。この日本赤十字社に在籍中の昭和35年（1960年）、彼の代表作となる『性生活の知恵』を執筆、発表します。この本が驚異的な売上を示し、百万部を超えるベストセラーとなったことで、謝国権氏の名は広く一般に知られることとなりました。この成功を受けて、昭和37年（1962年）に日本赤十字社を退職し、東京都世田谷区に自身の産婦人科診療所「謝国権診療所」を開設し、長年にわたり地域医療に貢献しました。

謝国権氏は、平成15年（2003年）11月12日に78歳でその生涯を閉じました。

性医学評論家としての活動と著作

『性生活の知恵』の成功により、謝国権氏は性に関する専門家としてメディアや出版の世界で広く求められるようになります。彼はこの分野におけるタブーを恐れず、科学的かつ実践的な視点から性の問題に向き合いました。彼の著作は、性に関する正確な知識の普及だけでなく、性の多様性や個人の性のあり方についても示唆を与えるものでした。

多数の著作がありますが、特に知られるのは以下の通りです。

• - 『お産 - らくなお産と上手な避妊法』（池田書店、1958年）
• - 『性生活の知恵』（池田書店、1960年）
• - 『結婚前後の知恵』（池田書店、1968年）
• - 『愛 - The Love in sex life』（池田書店、1969年）
• - 『姿 - Lure of postures』（池田書店、1970年）
• - 『図解妊娠と出産』（池田書店ウイッチ・ブックス、1979年）
• - 『Happy sex - 相談できない性の相談』（光文社、1980年）
• - 『ぱーふぇくと・らぶ』（毎日新聞社、1988年）

また、彼は海外の先進的な性研究の成果を日本に紹介する役割も果たしました。特に、アメリカの性研究者であるマスターズとジョンソンによる画期的な報告書の翻訳を手掛けています。

• - 『人間の性反応 - マスターズ報告』（原著Virginia E. Johnson、池田書店、1966年/1980年） - 翻訳
• - 『人間の性不全 - マスターズ報告2』（原著Virginia E. Johnson、池田書店、1980年） - 翻訳
• - 『同性愛の実態 - マスターズ報告3』（原著Virginia E. Johnson、池田書店、1980年） - 翻訳

さらに、ドナルド・E.カー著『性の生態学 - 生きのびるための知恵』（講談社、1971年）の翻訳も、黒田洸一氏と共に行っています。

メディアでの影響

彼の人気と影響力は出版分野にとどまらず、その著作は映画化もされました。代表作である『性生活の知恵』は、発表翌年の1961年に水野洽監督、阿部毅監督によってそれぞれ映画化されています。また、『これからのセックス 三つの性』（1964年、瑞穂春海監督）や『謝国権「愛」より （秘）性と生活』（1969年、鷹森立一監督）なども、彼の原作に基づいて制作されました。

謝国権氏の活動は、日本の性医学や性に関する社会的な理解を深める上で重要な役割を果たしました。彼の著作や評論は、現代においても性に関する議論を考える上での貴重な資料となっています。

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