護られなかった者たちへ

ミステリー小説『護られなかった者たちへ』

概要

『護られなかった者たちへ』は、中山七里による推理小説で、宮城県警の捜査一課を舞台にした物語です。2016年から2017年にかけて、全国14紙に連載され、2018年には単行本が出版されました。物語は、東日本大震災後の仙台で発生した連続殺人事件を中心に展開し、生活保護制度の問題点に切り込む内容となっています。この作品は、2021年に映画化もされました。

執筆背景

著者は、2017年の時点で全国164万世帯が受給している生活保護の現状を踏まえ、より深い社会問題を描きたいと考えました。仙台を舞台にするという出版社からの要望を受けて、テーマは早い段階で決定。然而、著者は生活保護の不正受給や制度内の問題を単に主張するのではなく、それに関わる人々の立場や感情を大切にしながら物語を進めていきます。和と悲劇が共存する日常の中、笘篠誠一郎と元模範囚の利根勝久という異なる視点から物語が描かれています。

あらすじ

物語は、震災から4年後の仙台市で始まります。両手が拘束された状態で餓死した福祉保健事務所の職員、三雲忠勝の遺体が発見されます。捜査が進む中で、彼の人生に対する悪評は見当たらないことがわかり、怨恨の可能性が疑われます。続いて宮城県議会議員の城之内猛留も同様の手法で殺害されるという事件が発生します。

捜査を担当する笘篠刑事は、二人の被害者に共通点があるはずだと直感します。その後の調査で、二人が同じ福祉事務所で働いていたことが判明します。笘篠とそのパートナー・蓮田は、福祉受給者との接触を通じて、制度の裏に潜む人々の苦悩を知ることになります。

彼らは、両者の勤務期間中に生活保護申請を却下された者や問題を抱える者に焦点を当て、潜在的な容疑者リストを作成します。容疑者たちは、善人の顔を持ちながらも、福祉制度に対する恨みを抱えていることが明らかになっていきます。

最終的に、利根勝久という男が事件の背後にいる可能性が示唆されます。利根はかつて、三雲に対して暴力を振るった経歴を持ち、その日が近づくにつれて物語は衝撃の展開へと進んでいきます。利根と三雲、城之内、そして事件の真相は、どのように絡み合っているのでしょうか。

登場人物

• - 笘篠誠一郎: 宮城県警の刑事で、震災により家族を失った過去を持つ。
• - 蓮田: 笘篠のパートナーで、家庭を持つ刑事。
• - 三雲忠勝: 被害者で福祉保健事務所の職員。
• - 城之内猛留: 別の被害者で県議会議員。
• - 利根勝久: 元犯罪者で物語の重要人物。

結論

『護られなかった者たちへ』は、社会問題に鋭い視点を向けた作品であり、その巧妙な構成とキャラクターの心理描写が特徴です。生活保護制度の実態に迫りつつも、登場人物それぞれの人間模様が物語に深みを与えています。この作品を通して、現実の社会問題への理解を深めることができるでしょう。

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