谷戸城

谷戸城について

谷戸城は、山梨県北杜市大泉町谷戸に位置する山城で、その跡は国の史跡に指定されています。八ヶ岳の山体崩落によって形成された尾根上に築かれており、標高は約850mです。同心円状に土塁や空堀を配置した輪郭群が特徴で、東西を川に挟まれ、北側は急峻な崖に囲まれているため、自然の地形を巧みに利用した堅固な城でした。

歴史

平安時代後期、源義清・清光親子が常陸国から甲斐国へ流罪となり、その子孫が甲斐源氏として勢力を拡大しました。谷戸城は、この逸見清光の居城と伝えられており、清光が1199年にこの地で亡くなったという記録も残っています。

治承・寿永の乱では、甲斐源氏の一族が活躍し、1180年には源頼朝の使者である北条時政を「逸見山」で迎えたとされています。この「逸見山」の候補地の一つが谷戸城周辺であると考えられています。

戦国時代には、武田晴信（信玄）が信濃侵攻の際、一時的に「矢戸御陣所」に宿泊したという記録がありますが、これが谷戸城を指すかは定かではありません。

1582年の武田氏滅亡後、本能寺の変をきっかけに起こった「天正壬午の乱」では、徳川家康と後北条氏が甲斐を争奪しました。この際、後北条氏は谷戸城にも陣を敷いたとされています。

江戸時代には、1825年の村方明細帳にも谷戸城の記録が残っています。

遺跡の概要

1976年には山梨大学考古学研究会による測量調査、1982年には一部の発掘調査が行われました。調査の結果、堀跡などの遺構や、青磁片、内耳土器、洪武通宝などの遺物が出土しています。

城跡は、北東や西側に横堀を伴う土塁があり、南斜面には帯状の郭が数段にわたって広がっています。また、北側には方形の平坦地が広がり、内部に三角形の主郭部があります。これらの構造から、谷戸城が堅固な防御機能を持つ城郭であったことが伺えます。

現在の谷戸城

谷戸城は、地域振興の観点から注目され、1993年に国の史跡に指定されました。その後、1999年までに公有地化が行われ、現在では歴史的な価値を保全されています。

谷戸城跡の北西角には、北杜市考古資料館が併設されており、谷戸城を含む北杜市内の考古遺跡や出土品を展示・解説しています。訪れることで、より深く谷戸城の歴史や文化を理解することができます。

参考文献

北杜市教育委員会、2006年3月31日 発行、『史跡谷戸城跡 環境整備事業に伴う発掘調査報告書』、北杜市
北杜市教育委員会、2008年3月31日発行、『史跡谷戸城跡　史跡環境整備事業報告書』、北杜市
北杜市教育委員会、2009年3月31日発行、『史跡谷戸城跡周辺遺跡　史跡谷戸城跡範囲確認調査報告書』、北杜市
大泉村教育委員会、2002年3月31日 発行、『史跡 谷戸城跡IV』、大泉村
宮坂武男、2014年4月1日 初版初刷発行、『甲斐の山城と館 上巻』、戎光祥出版
岩本誠城、2015年9月11日 発行、『山梨の古城』、山梨ふるさと文庫
永原慶二監修、2011年11月30日 発行、『新版 全譯 吾妻鏡』、新人物往来社

関連項目

日本の城一覧

外部リンク

* 谷戸城の地図

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