豊岡杞柳細工

豊岡杞柳細工

豊岡杞柳細工（とよおかきりゅうざいく）は、兵庫県豊岡市を中心に発展した伝統工芸品です。コリヤナギという柳の一種を主に使用し、麻糸や籐などを組み合わせて作られます。柳行李（やなぎごうり）が代表的な製品で、その技術は籠などの様々な製品に応用されています。2023年10月26日時点で、経済産業大臣によって国の伝統的工芸品に指定されており、特許庁の地域ブランドとしても保護されています。

概要

豊岡杞柳細工は、円山川下流域の湿地帯に自生していたコリヤナギを材料として発展しました。現在では、コリヤナギは職人自身の手で栽培されています。コリヤナギを割り、薄く削った材料を麻糸で編み上げて作られる柳行李は、かつては多くの家庭で衣類や書物の収納、弁当箱として利用されていました。

豊岡杞柳細工の歴史は古く、奈良時代には「但馬国産柳箱」が東大寺正倉院に納められていたという記録が残っています。杞柳産業が確立したのは、豊岡藩が城下町を形成した安土桃山時代です。初代豊岡藩主である京極高盛が、その加工技術の育成と販売を奨励しました。1763年には専売制が確立し、「豊岡の柳行李」として全国に知られるようになり、日本有数の産地として発展しました。

江戸時代には旅行用具として庶民に広く利用され、明治時代には数々の国際博覧会に出品されました。昭和時代には軍事行李なども生産され、1992年に国の伝統的工芸品に指定されました。2006年には、玄武洞公園内の玄武洞ミュージアムに「豊岡杞柳細工ミュージアム」が開設され、資料や道具が展示されています。2023年には、地域おこし協力隊制度を活用して、数十年ぶりに独立する職人が現れました。

沿革

奈良時代 - 東大寺の正倉院に但馬国産柳箱が上納される
1636年（寛永13年） - 成田広吉が初めて柳行李を製造販売したとされる
1881年（明治14年） - 第2回内国勧業博覧会（東京・上野公園）に八木長右衛門が行李鞄を出品
1893年（明治26年） - シカゴ万国博覧会に出品
1900年（明治33年） - パリ万国博覧会に出品
1903年（明治36年） - 第5回内国勧業博覧会（大阪・天王寺）に遠藤嘉吉郎が旅行鞄を出品
1904年（明治37年） - セントルイス万国博覧会に出品
1910年（明治43年） - 日英博覧会に出品
1915年（大正4年） - サンフランシスコ万国博覧会に出品
1917年（大正6年） - 柳行李商豊岡同業組合が但馬物産杞柳製品見本帳を発行
1922年（大正11年） - 国の伝統的工芸品に指定される
1925年（大正14年） - パリ万国博覧会に出品
1965年（昭和40年） - 皇太子徳仁親王が愛用した籐豆バスケット「ナルちゃんバック」が流行
2002年（平成14年） - 皇太子妃雅子が愛用する
2002年（平成14年） - グッドデザインひょうご日常生活部門に選定
2003年（平成15年） - グッドデザインひょうご大賞受賞
2006年（平成18年） - 豊岡杞柳細工ミュージアムが開設
2007年（平成19年） - 特許庁の地域ブランドに認定される
2023年（令和4年） - 数十年ぶりに伝統を継承したブランド（KORI ANRI JAPAN）が活動を開始

柳行李の特徴

丈夫で軽く、壊れにくい
蓋の調整で収納量を調整可能
衣類を保護し、大容量
通気性が高い
純白の美しさ

柳行李の種類

尺荷行李
文庫行李
薬屋行李
小間物行李
帖行李
行李かばん
軍用行李
永尺行李
大荷行李
大馬行李
袈裟行李
裃行李
飯行李

関連施設

KORI ANRI JAPAN

材料の栽培から製造まで一貫して手掛けるブランド。
玄武洞
玄武洞ミュージアム

豊岡杞柳細工に関する資料や作品を展示。かご編み体験も可能。
但馬地域地場産業振興センター - 販売展示

祭事

柳まつり

産地組合

兵庫県杞柳製品協同組合

参考文献

北近畿経済新聞（2023年12月11日）

外部リンク

兵庫県杞柳製品協同組合
KORI ANRI JAPAN

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