豊島久真男

豊島久真男の業績と人物

豊島久真男氏（とよしま くまお、1930年10月5日－2022年3月9日）は、日本の医学界において非常に重要な存在でした。位階は従三位であり、東京大学名誉教授及び大阪大学名誉教授として、ウイルス学と腫瘍学を専門としました。特に、細胞のがん化を制御する遺伝子が存在することを初めて証明し、「がんは遺伝子の異常によるものである」という認識を確立しました。これはがん研究において大きな転機をもたらし、各国の研究に影響を与えました。

生い立ちと学歴

豊島氏は大阪府出身で、1930年に生まれました。彼の父親は豊島商店を経営する事業家であり、豊島氏自身も医療の道を志すことになりました。1954年に大阪大学医学部を卒業し、その後、1959年に同大学院で医学博士号を取得しました。彼の博士論文は「腹水癌細胞におけるエクトロメリアウイルスの紫外線不活化同種ウイルスによる干渉」という題であり、このころからすでに彼は専門的な探求を始めていました。

研究キャリア

豊島氏は、1961年に大阪大学微生物病研究所で助教授として活動を開始し、1972年に教授に昇進しました。その後、1979年から東京大学医科学研究所で教授としても活動し、80年代から90年代にかけて日本の癌研究を牽引しました。特に、1969年にラウス肉腫ウイルスを用いてがん遺伝子の機能を研究し、がん化のプロセスをコントロールする遺伝子がRNA上に存在することを示しました。これによって、がんと遺伝子の関連性が明確になり、彼の名は世界的に知られることとなりました。

特に注目すべきは、src遺伝子の同定です。これは後にアメリカの研究チームによって確認され、癌遺伝子研究の重要な基礎となりました。src遺伝子を同定したビショップ博士とヴァーマス博士はこの発見をもとにノーベル賞を受賞しています。

さらに、1982年にY73肉腫ウイルス全構造の解析を行い、v-yesの発見により、srcファミリーの概念を形成しました。また、1983年には教授の山本雅と共に癌遺伝子erbBを発見し、翌年にはそれがEGFレセプター遺伝子に関連することが確認されました。特に、1986年にはHER2遺伝子の発見も行い、乳がんの研究において重要な貢献をしました。

社会貢献とリーダーシップ

豊島氏はまた、「対ガン10カ年総合戦略」の研究を統括し、ヒトクローン倫理問題についても活動しました。彼は多くの学外役職を持ち、日本ウイルス学会及び日本癌学会の会長を歴任するなど、日本の癌研究の推進者として広く認知されています。

受賞歴

豊島氏の功績は数多くの受賞によって評価されています。1976年には高松宮妃癌研究基金学術賞、1985年には武田医学賞、2001年には文化勲章を受賞し、その業績は国際的にも認められています。これらの受賞は、彼がだけでなく、医学界全体に多大な貢献を果たしてきたことを示しています。

最後の年

彼は2022年3月9日に91歳で亡くなり、その死をもって従三位に叙されました。豊島久真男氏の業績は、今なお多くの研究者に影響を与え続けており、がん研究の発展に欠かせない存在として記憶されるでしょう。

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