豊島美術館

豊島美術館

香川県土庄町に属する瀬戸内海の島、豊島。その唐櫃地区の丘陵地に、豊島美術館は静かに佇んでいます。瀬戸内海を見晴らす高台に位置するこの美術館は、建築家・西沢立衛氏が設計を手がけ、2010年10月17日、瀬戸内国際芸術祭の開催中に開館しました。周囲の豊かな自然景観と一体となることを目指したこの美術館は、従来の「箱」としての美術館像とは一線を画す、独自の空間体験を提供します。

建築とアートの融合

豊島美術館の建築そのものが、ここに展示される唯一の作品である内藤礼氏による「母型」と不可分一体の関係にあります。美術館の構造は、水滴が地面に落ちたような、あるいは生命の始まりを思わせるような、継ぎ目のないコンクリート・シェル構造の屋根が地面からゆるやかに立ち上がっています。このドーム状の空間には、上部に開けられた二つの大きな開口部から自然の光、風、そして雨といった外気が直接流れ込みます。時間帯や天候、季節によって変化する光や音、空気の流れが、空間の表情を刻々と変えていきます。

空間内部で展開される内藤礼氏の作品「母型」は、地面から湧き出す水滴のような現象が中心です。コンクリートの床に生命を得たかのように現れては消える水の粒たちは、空間を流れる風に運ばれたり、互いに寄り集まったりしながら、予測不能な動きを見せます。訪れる人は、この水の動きと、開口部から差し込む光、周囲の自然の音、そして自身の存在とが織りなす、静かで瞑想的な時間に身を置くことになります。作品は固形物ではなく、常に変化し続ける生命のようなものであると言えるでしょう。館内は、この静謐な空間体験を妨げないため、写真撮影は原則禁止されています。

利用案内

豊島美術館を訪れる際は、オンラインチケットによる事前の予約が必要となります。開館時間は季節によって異なります。

3月～9月: 10時～17時（最終入館 16時30分）
10月～2月: 10時30分～16時（最終入館 15時30分）

休館日は、通常は毎週火曜日ですが、季節によって変動します。

3月～11月: 毎週火曜日
12月～2月: 毎週火、水、木曜日

ただし、祝日の場合は開館し、その翌日が休館となります。例えば、月曜日が祝日の場合は火曜日が開館し、翌日の水曜日が休館となります。年末年始も休館期間が設定されますので、訪れる前に公式サイトなどで確認することが重要です。入館料は1,570円ですが、15歳以下の子供は無料です。

アクセス

豊島へのアクセスは、主に船を利用します。

高松港から: JR高松駅から徒歩約5分の高松港からは、豊島フェリーに乗船し、約35分で豊島の家浦港に到着します。家浦港からはシャトルバスに乗り換えて約15分です。家浦港からは直島の宮浦港や岡山県の宇野港への船便もあります。
小豆島土庄港から: 小豆島の土庄港からは小豆島豊島フェリーを利用し、約30分で唐櫃港に到着します。唐櫃港からはシャトルバスでわずか約3分で美術館に到着します。

どちらのルートも船とバスを乗り継ぐ必要がありますが、豊かな瀬戸内海の景観を楽しみながらアクセスできます。

関連情報

豊島美術館は、直島の地中美術館や李禹煥美術館などと共に、「ベネッセアートサイト直島」を構成する重要な施設の一つです。また、瀬戸内海の島々を舞台に3年に一度開催される国際芸術祭「瀬戸内国際芸術祭」の主要な会場としても知られています。これらの施設やイベントは、アートを通して地域や自然の魅力を再発見することを目的としており、豊島美術館もその哲学を体現する存在と言えるでしょう。

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