豊後国の二孝女

豊後国の地で、二人の姉妹「つゆ」と「とき」が見せた真の孝行の物語が、江戸時代後期のある巡礼の旅を舞台に展開されます。彼女たちの父、川野初衛門は文化元年（1804年）、親鸞ゆかりの地を目指し旅立つものの、旅の途中で足を痛める事態に陥ります。この出来事により、初衛門は常陸国水戸藩の青蓮寺で長期の療養を余儀なくされることになりました。

父親の病は、しばらくの間家族には伝わりませんでしたが、文化8年（1811年）にある重要な出会いがこの状況を変えます。京都の西本願寺で開催された親鸞550回忌大遠忌法会の際、青蓮寺の住職は川野家の菩提寺善正寺の住職と出会います。この出会いがきっかけとなり、姉妹に父親の現状が知られることになりました。

姉妹は自らの意志で父を救うため、故郷の臼杵藩の許可を得て、常陸太田に向かいます。旅は困難を極め、約2ヶ月（または4ヶ月とも言われる）にも及ぶ長旅でしたが、姉妹はついに青蓮寺にたどり着き、ここで父との再会を果たします。家族の絆を強く感じさせる感動的な瞬間でした。

その後、姉妹と父は、近隣の水戸藩と臼杵藩の協力を受け、無事に故郷へ帰ることができました。彼女たちの物語は、郷里の臼杵市で盆踊りの口説きに伝えられるなど、地域に深く根付いています。さらには、臼杵市泊にはこの物語にちなんだ供養碑が建立され、小学校では記念碑が立てられ、校歌にも二孝女が登場するほどの重要な文化遺産となっています。

しかし、この物語が実際の出来事であったかどうかは長らく不明でした。2004年に郷土史研究家が青蓮寺に照会を行った結果、2005年には青蓮寺で姉妹の書状など17通の書簡が発見され、実話として確認されました。この書簡群は「豊後国二孝女関係資料」として文化財に指定され、その内容が広く知れ渡ることとなりました。

さらに、この物語は教育的価値を持ち、2007年には茨城県の県立高校の道徳副読本に掲載されるなど、郷土の歴史を学ぶ上での重要な教材とされています。2010年10月には青蓮寺内に記念碑が建立され、今もなお二孝女の偉業は受け継がれています。彼女たちの行動は、愛と絆があればどんな困難も乗り越えられることを教えてくれます。

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