豊栄町

豊栄町は、かつて広島県の中央部に位置していた町で、賀茂郡に属していました。現在は東広島市の一部を構成する地域となっています。
地理的には広島県のほぼ中央に位置しており、その立地から南に隣接する旧賀茂郡福富町とともに、広島県の地理的な中心点（広袤面における中心）を巡る話題の中心となることもありました。この「へそ」とも称される立地にちなみ、現在でも地域活性化のために、生卵を中心に様々な具材を盛り付けた丼飯「広島へそ丼」がご当地B級グルメとして提供され、地域のシンボルの一つとなっています。

歴史

豊栄町の近代以降の歴史を振り返ると、自治体再編の動きが見られます。1972年には、同じ賀茂郡内の西条町、志和町、高屋町、八本松町、福富町との間で、対等合併による新たな市制移行が議論された時期がありました。しかし、地理的な状況などを考慮した結果、豊栄町と福富町はこの合併協議の対象から外れることとなりました。この経緯は東広島市が編纂した『10年のあゆみ』に記録されています。
その後の平成の大合併の流れの中で、豊栄町は2005年2月7日、同じ賀茂郡に属していた黒瀬町、河内町、福富町、そして豊田郡の安芸津町とともに東広島市に編入されました。これに伴い、自治体としての豊栄町は消滅し、現在は東広島市豊栄町としてその地域名が残されています。

沿革

自治体としての豊栄町の歩みは、1889年4月1日の市町村制施行まで遡ります。この時点で、現在の豊栄町域には、当時世羅郡に属していた上田村と吉川村、豊田郡に属していた川源村と乃美村が存在していました。
世羅郡上田村は1896年11月7日に世羅郡上山村へと改称。一方、豊田郡では、1944年1月1日に川源村と乃美村が合併し、豊田郡豊栄村が誕生しました。この豊栄村はその後、1949年4月1日に町制を施行し、豊田郡豊栄町となりました。
町域の変更もあり、1955年3月31日には、世羅郡上山村の一部（飯田地区）と世羅郡吉川村の一部（吉原地区）を編入しています。なお、同日には世羅郡上山村の残部が双三郡三和町（現在の三次市）へ、世羅郡吉川村の残部が世羅郡世羅西町（現在の世羅町）へそれぞれ移行しています。
郡の所属についても変更があり、1956年4月1日には賀茂郡と豊田郡の間での所属町村変更が行われ、豊栄町は賀茂郡に属することになりました。
近隣自治体との境界調整も複数回行われています。1971年8月1日には、乃美地区の一部が賀茂郡福富町に割譲される一方、賀茂郡福富町久芳地区の一部を編入しました。さらに1988年9月1日には、能良地区の一部が再び賀茂郡福富町に割譲され、同時に賀茂郡福富町久芳地区の一部と、当時高田郡だった向原町（現在の安芸高田市）の坂地区の一部を編入しています。これらの変遷を経て、2005年2月7日に東広島市に編入され、その歴史を終えました。

地理

豊栄町域には椋梨川が流れており、これは沼田川の支流の一つです。周囲には山々が連なり、主なものとして天神嶽（標高757.5m）、板鍋山（標高757.2m）、高平山（標高498.2m）などがあります。
東広島市への編入直前（2005年2月6日時点）における町内の大字（地区名）としては、安宿（あすか）、飯田（いいだ）、鍛冶屋（かじや）、清武（きよたけ）、能良（のうら）、乃美（のみ）、別府（べふ）、吉原（よしはら）が存在していました。

交通

豊栄町内には鉄道は通っておらず、駅もありませんでした。最寄りの鉄道駅としては、JR山陽本線の入野駅や、JR芸備線の向原駅などが利用されていました。
道路網としては、一般国道である国道375号と国道486号が町域を通過していました。また、主要地方道として広島県道28号吉舎豊栄線、広島県道29号吉田豊栄線、広島県道60号大和福富線が、一般県道として広島県道161号三和大和線、広島県道341号吉原清武線、広島県道342号別府河内線、広島県道347号河戸豊栄線などが整備され、地域内外を結んでいました。

教育

教育施設については、2005年2月6日時点では、町立の小学校として豊栄町立豊栄小学校がありました。町内の小学校は、1993年から1995年にかけて統合が進められ、一校に集約されていました。中学校は豊栄町立豊栄中学校が設置されていました。また、高等学校としては広島県立賀茂北高等学校が町内に所在していました。

出身・ゆかりのある人物

豊栄町にゆかりのある人物としては、政治家として衆議院議員を務めた中川俊思氏が知られています。彼の墓所が豊栄町安宿にあります。中川俊思氏は、後に同じく衆議院議員となった中川秀直氏の義父であり、中川俊直氏の祖父にあたる人物です。

この地域は、現在は東広島市豊栄町として、その自然や歴史を受け継いでいます。

もう一度検索