豊田利三郎

豊田利三郎：トヨタ自動車の礎を築いた初代社長

豊田利三郎（とよだ りさぶろう）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の実業家です。1884年に滋賀県で生まれ、豊田自動織機製作所とトヨタ自動車工業という、日本を代表する企業を率いました。義父である豊田佐吉の事業を受け継ぎ、義弟である豊田喜一郎の才能を信じ、自動車産業への道を切り開きました。

実業家としての歩み

神戸高等商業学校、東京高等商業学校（現・一橋大学）で商業を学び、伊藤忠商店（現・丸紅）での勤務を経て、豊田家の婿養子となります。義父である豊田佐吉の自動織機事業を支え、1926年には豊田自動織機製作所の初代社長に就任しました。

しかし、利三郎の名を最も知らしめたのは、トヨタ自動車工業（現・トヨタ自動車）の初代社長としての功績でしょう。当初、自動車製造には反対の立場でしたが、喜一郎の熱意と綿密な計画、そして西川秋次からの資金援助を受け、自動車事業への参入を決意します。1937年、豊田自動織機製作所から自動車部が独立し、トヨタ自動車工業が設立されると、初代社長に就任しました。

喜一郎との協調

トヨタ自動車の実質的な創業者とされるのは、喜一郎です。利三郎は、喜一郎の才能を高く評価し、経営者として彼を支えました。1941年には社長の座を喜一郎に譲り、自身は会長に退きましたが、その後も豊田工機社長を兼務するなど、グループ全体の発展に尽力しました。業績悪化により1949年に喜一郎と共に退任。

多岐にわたる事業展開

豊田利三郎は、自動車産業以外にも、豊田製鋼、中央紡織、庄内川レーヨンなど、多岐にわたる企業の経営に携わりました。これらの事業を通じて、日本の産業発展に大きく貢献しました。

家族と晩年

豊田利三郎は、愛子夫人との間に四人の息子をもうけました。長男の幸吉郎は豊田自動織機製作所の専務、二男の大吉郎は豊田通商の会長、三男の信吉郎は豊田紡織（現・トヨタ紡織）の会長、四男の禎吉郎は日本電装（現・デンソー）の会長を務めるなど、息子たちもまた、日本の経済界で重要な役割を果たしました。1952年6月3日、68歳で死去。同年3月に死去した喜一郎の後を追うように亡くなりました。

豊田利三郎の遺産

豊田利三郎は、日本の自動車産業の礎を築いた人物として、その名が刻まれています。彼の事業家精神と、喜一郎をはじめとする有能な人材を見抜く力は、今日のトヨタ自動車の発展に不可欠なものでした。佐吉の遺志を継ぎ、自動車産業という新たな分野に挑戦した利三郎の功績は、日本の経済史に燦然と輝いています。

参考文献

名古屋人士の俤（珊々社・1930年）
財界中心人物を語る（金星堂・1939年）
日本経済を育てた人々（関西経済連合会・1955年）
経営史学46(2) 2011年9月（経営史学会）
経済人6(10) 1952年10月（関西経済連合会）
豊田利三郎氏伝記（豊田利三郎氏伝記編纂会 ・1958年）

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