豊田神社 (花蓮港庁)

豊田神社の歴史と変遷

豊田神社は、日本統治時代の台湾に建設された官営日本人移民村、豊田村（現在の花蓮県寿豊郷の一部）に存在した神社です。1915年に建立され、第二次世界大戦後には碧蓮寺として再編されました。この神社は、当時の日本人移民にとって精神的な支柱としての役割を果たしていました。

日本統治時代

1913年に開基した豊田村は、翌1914年10月、村の代表者らが台湾総督府に神社の設立を申請しました。神社は、豊田村に住む日本人住民の精神的な拠り所として計画されました。1914年12月に建設が開始され、翌年1月には本殿が完成。拝殿や鳥居も整備され、6月5日に鎮座式が執り行われました。当初、例祭日は鎮座式の日である6月5日とされていましたが、農繁期であることや気候が厳しいことから、1922年に10月25日に変更されました。その後、1937年6月5日には改築を祝う遷座式が改めて行われました。

戦後

第二次世界大戦後、豊田神社の建物は残り、1946年には釈迦と不動明王を祀る「豊田碧蓮寺」として再出発しました。灌仏会、中元節、下元節には祭礼が執り行われていました。しかし、1958年7月のウイニー台風により、神社時代からの建物は倒壊。住民は仮小屋を建て、釈迦と不動明王の像を守りました。その後、1961年に宜蘭県羅東鎮の東山寺を参考に再建工事が進められ、翌年3月に落成。「豊田碧蓮寺」として正式に改称され、新たに神農、地母娘宮、媽祖が祀られるようになりました。

建築の特徴

豊田神社の建築は、北向き（実際には北東向き）であることが特徴的です。台湾の他の神社が南向きに建てられることが多い中、この点は異彩を放っています。現在の碧蓮寺は、かつての神社の拝殿があった場所に建てられており、豊裡村中山路と民権街の交差点には、寺の山門としての役割を果たす鳥居が残っています。一の鳥居から寺の敷地まで数百メートルに及ぶ南西向きの道は、かつての参道であり、現在も石灯籠や狛犬が配置されています。境内には、台湾総督・長谷川清が揮毫した「開村三十週年紀念碑」が現存しています。

祭神の変遷

豊田神社の祭神は、大国魂命、大己貴命、少彦名命、能久親王でした。碧蓮寺に改編された後は、釈迦、不動明王、五穀爺、地母娘娘、天上聖母、関聖帝君と、仏教と道教の神々が祀られるようになり、宗教的な多様性がみられます。

まとめ

豊田神社は、日本統治時代の台湾における日本人移民の歴史を物語る重要な遺構です。戦後の変遷を経て、現在は碧蓮寺として地域住民の信仰の中心となっています。その建築様式や祭神の変遷は、台湾の歴史と文化を理解する上で貴重な手がかりとなるでしょう。

関連項目

台湾の神社
林田神社
吉野神社

参考文献

（参考文献のリストがあればここに記述）

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